目が覚めたら平安時代で中宮様になっていました
NAZUNA
第1話 修学旅行
2023年の2月。春夏は修学旅行の為に京都に来ていた。
もうすぐ春夏達は高校2年生。この修学旅行が終わればそろそろ受験勉強に入らなければならない。
これが最後の楽しみだと思うとなんとも言えないような寂しさを感じた。
「これから向かうのは平安神宮、来年の大河ドラマの舞台となります。」
バスガイドがマイクを片手に説明している。
「平安神宮だって!春夏そういうの好きだったよね〜」
隣に座っている春夏の親友の結奈が緩くウェーブの掛かった艶やかな髪を指先で弄りながら言った。
「凄く好き。正直とっても楽しみだった。」
やがて、目的地の平安神宮に辿り着いた。初春の京都はまだまだ寒さがあるけれど、あちこちで梅の花が咲き始めていた。
あと1ヶ月ちょっとすれば桜の花が咲き乱れるだろう。
平安神宮には、ソメイヨシノの他にも枝垂れ桜や八重桜が植えられていると聞いた。
『 いにしへの 奈良の都の 八重桜 けふ《きょう》九重に 匂ひぬるかな』
春夏はふと、小倉百人一首61番歌を思い出した。この短歌は中宮(皇后)彰子に仕えていた女房の伊勢大輔が詠んだ歌だ。
「ねえねえ、春夏〜。十二単を着て此処に来たらSNS映えしそうだよね〜」
結奈は呑気にそんなことを考えている。
「今から自由行動らしいから他の場所も一緒に回ろうよ」
自由な結奈に連れられ、半ば強引に平安神宮を離れることとなった。
京都の街並みを眺めながら歩いていると、街角に占いの館があるのが見える。
珍しいなと春夏が思っていると、結奈が一段と明るい表情になって
「ねえねえ、1回占ってもらわない?」
「少し気になってたしいいよ。」
そして2人で占いの館に入る。中に居たのは小柄な老婆だった。
「あらいらっしゃい。」
優しそうな声だった。
「こちらのお嬢さん、あなたはとても元気で賢いわね。あなたの前世は、今から1000年以上前に宮中で帝の妃に仕えていた女官でしょう。」
占い師に言われて結奈が更に目を輝かせる。
「そちらのお嬢さん、あなたはとてもしっかりしているわね。あなたの前世は1000年以上前に生きていた帝の妃でしょう。」
予想外のことに思わず固まってしまう春夏。
「「ありがとうございました!」」
料金を払ってから占い師にお礼を言って出てくる二人。
それからお互いにおしゃべりをしながら道を歩く。
そして横断歩道を横断している時だった。
「春夏!!危ない!!」
結奈の悲鳴に近い叫び声が聞こえたと同時に車のエンジン音がすぐ傍で聞こえてくる。
(なんで…?)
そして、全身に今まで感じたこともないような衝撃を感じたかと思えば、春夏の身体は宙を舞っていた。
自分が、信号無視の乗用車に撥ねられたと気付いた時にはもう取り返しがつかなかった。
春夏の身体はそのまま舗装された道路に叩きつけられ、激しい痛みが全身を襲う。
生暖かい液体が身体から流れ出ていることに気付いた。
(血が…たくさん…出てる…?)
「春夏…!春夏…!」
結奈の涙声と悲鳴が混じったような声が聞こえた。
いつも明るい結奈からこんな声を聞くのは初めてなのに、何だか懐かしい気がするのは何故だろうか。
そう思ったのを最後に、春夏は意識を手放した。
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