タクシー

「マイッタなぁ」


ベテランタクシー運転手・真鍋貞夫



どしゃ降りの雨

街灯は途切れ途切れ

暗い山道

ワイパーはMAX



「チッ、相変わらず不気味なとこだな」


帰りを急ぐ貞夫




どしゃ降りの中、傘も差さずに手を上げて立つ女



「おいおい…」



ずぶ濡れ無言で乗り込む女



「どちらまで?」


女の青白い右手の人差し指が、貞夫の左目に突き刺さりそうな程の距離で真っ直ぐ前を差している



(ヤバイの乗せちまったな…)


チラチラとルームミラーで後部座席を確認する


濡れてぺっとりとまとわりつく髪をあげる事もなく女は俯いたまま



すると突然、


ドサッ!!



(ひっ…)


ルームミラーで確認する貞夫



‥‥女が居ない

座席はびしょ濡れ


(ひぃっ…)



しかしまだ感じる何か


恐る恐る振り返る


とそこに座席から転げ落ちている女を目視



(なぁんだ、ただの酔っ払いじゃねぇか…











──ニュース。



「昨夜0時半過ぎ、〇〇県の〇〇で──」


「──亡くなっていたのは真鍋貞夫さん──」

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