女2

「つーか別れようとかリアルなのやめてくれ」


「めっちゃリアルだったよね~今年もおもしかったでしょ?」


「笑えない。リアルすぎて」


あれ…


「いくらエイプリルフールだからってこんなんタチ悪すぎるだろ」


「え、ごめーん」


あ、ちょっとなんか…ヤバいわコレ…。


「嘘でも聞きたくなかったわ」


彼の反応が思っていたのと違う。全然違う。


「ったく…」


彼は今、機嫌が悪い。


「ごめん」


そうさせたのは、私。


「マジで別れようかと思った」


抱きついていた手をはがされてしまった。


「……」


少し眠たそうな二重の優しい彼の目が、冷めて鋭くなっていた。


何も言わずに起き上がり私に背を向けベッドから足をおろした彼が「はぁー…」と大きな溜息をついた。


ちょっとやり過ぎた。

このくらいなら大丈夫でしょって思っちゃってた。


彼は笑ってくれると、彼は許してくれると、彼に愛されていると、思い込んでた。


いくらエイプリルフールだからって、調子に乗って彼を怒らせ傷付けてしまった。


彼の言う通り、嘘でもあんな事、言うべきじゃなかった。



「…俺たち付き合って5年だっけ?」


背を向けたまま彼が言う。


「…うん」


「5年かぁ…。はぁー…」


「……」


彼が今どんな顔をしてどんな気持ちでいるのかが背中と声色でわかってしまう。


「…俺たちさぁ、もうそろそろいい加減…」


立ち上がろうとしたのだろう少しだけ身体を動かした彼に思わず抱きついた。


別れの言葉を言われたくなくて。


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