初詣②
神様
俺、神田拓実は
スーたんが幸せになれるよう全力を尽くすことを誓います。
あ、仕事もそこそこで頑張ります。
チラッと横を見ると、目を閉じて真剣に神に誓うスーたんが、同じくチラリとこちらを見て目が合う。
エヘっと可愛く笑う。
そしてまた目を閉じて誓う。
「拓実さんが元気で楽しく暮らせますように…
あ、違った!
元気に楽しく暮らさせます!」
「何目線それ」アハハ
大行列に並んで時間がかかった初詣は終わり、「お腹すいたーーー」だそうで、何か食べることにした。
「何食べたい?」
「ラーメン!」
即答。
朝霧が言ってたっけ、スーたんラーメン好きだって。
ということで日光を離れ、ラーメン屋を探した。
「初詣にこんなに並んだの初めてだった〜」
「やっぱ凄いよね」
「拓実さんいつもどこに行くの?」
「実家の近くの小さいとこ。
あ、でも福岡いた時は太宰府天満宮行ったな〜」
「わ、いいな
私も受験の時行ったよ、家族で」
「そっか」
あぁ、確か美保と行ったんだっけ。
資格を取るのに神頼みって。
「でもあそこ学問の神様なんでしょ?
誰かの受験とか?」
「あ、元カノと…」
「そ…そっかそうなんだ…」
スーたんはそれきり何も聞かなかった。
「スーたん?」
ラーメン屋が見えてきた。
「あ、うんごめん」
なんか喋らなくなった。
まさかなにか怒ってる?
スーたんの怒ったとこ知らないからわからない。
なんかまずい事言ったっけな…
「帰る?」
「え!やだ…ごめんなさい」
んーーっと、何が?
「じゃあ食べる?」
「うん」
駐車場がバカ広いラーメン屋に入った。
人気のラーメン店なんかわからないし、元日の今日、開いているかもわからない。
「らっしゃっせーーー!」
うん、ファミリー向けだ。
「2名さまですね!
あちら!窓際のお席に!」
席も広いな。
カウンターでよかったけど。
そして店員さんは次に来たお客さんを対応する。
「名前書いてお待ちください、すんません」
「おなかしゅいたーーー」エーンエーン
「すぐだからね、あ、ラムネ食べようか」
「うっせぇな、黙らせろよ」
「仕方ないじゃん!お腹すいてるんだから!
だから近場に行こうって言ったのに!」
うわーーそんな怒らんでも。
「拓実さん…」
「うん、いい?」
「私待てるよ、大人だもん」
「あの、良かったら先にどうぞ
僕たち狭い席で全然いいので」
スーたんのこういうとこ好きだ。
というか感覚が合うんだと思う。
譲られたことにお礼も言えなかった激おこの旦那。
こんな親には絶対ならないと心に誓い、俺とスーたんはラーメンを食べた。
「なんかあっさりしてるね」
「うん、3杯くらい食べれそう」
「スーたんそれはさすがに無理でしょ」
はぁ…
え、ため息?
「あんなに怒らなくてもいいのにね…」
スーたんは誰かが怒ってる状況が嫌なのかもしれないな。
キャンプの時もそうだった。
半年一緒に暮らしたとはいえ、知らないことは沢山ある。
あの暮らした日々は、お互いを知るような時間ではなかった気がする。
表面だけで、楽しいことだけを見るようにして暮らしていたと言える。
ラーメンが好きなんて事も知らなかったくらいだ。
「スーたん見て」
「え?」
窓際の席に座った激おこ家族は
「よかった」
幸せそうにラーメンを食べていた。
「どこの家族もお父さんがすぐ怒るのかな」
「スーたんちそんな感じだった?」
「うん、お父さんすぐ怒る」
「うちはどっちかというと
お父さんがお母さんを宥めてたかもしれない」
「そうなの?」
「一番最初にキレるのばあちゃんだしね」
アハハ
「家族によって違うね」
「そうだね」
スーたんと家族になりたい。
そんなこと言えないけど。
お腹いっぱいになり、都内に戻った。
「どっか行きたいとこある?」
「んー、特には。拓実さんは?」
「買い出しは明日でいいし、そうだな〜」
一緒に同じ家に帰らないって、どうしたらいいんだっけ。
今までだったら、買い物して帰って休憩して家のことして、暇だったら映画でも見てたかもしれない。
「ボーリングでも行くか!」
「え」
あれ?ダメだった?
「ボーリングしちゃうと指が疲れちゃって…」
「ですよね、わかってた、うん」
そうじゃん!指ケガしたら困る!
「ごめんね拓実さん、困らせて
疲れたし帰ろっか」
「嫌だ」
「え?」
それは嫌。
「せっかくデートなのに」
「デートなの?」
「違う?」
「違…くない」
なんか笑ってくれた。
「あ、じゃあ行きたいとこある!」
そんで向かったのは100均。
正月から都心の人混みに車を停めるのが辛すぎて、また郊外に向かい、大きな100均に行った。
「あ、これこれこんなやつ」
なんか白い収納ケースみたいな。
「キッチンどうにかしたかったの」
「いいね、俺も買おうかな」
「拓実さんち片付いてるじゃん」
「スーたんちは散らかってるの?」
「自炊するようになったら
調味料とか買い置きとか増えてきて」
「車だから普段買えないようなの買いな」
「だよね!」
「わ、スーたん見てキャンプ用品ある!」
「すごーい!しかもオシャレだよ!」
100均を楽しむ。
「あれ?拓実?」
スーたんが何故か自分用の折りたたみコップを選んでいる時だった。
「お母さん、何してんの?」
「イオンの帰り」
「あ、結局行ったんだ」
お母さんの視線は俺の右下へ。
「やだスーたんちゃんだ!」
しまった。
付き合ってることになってる。
「お母さん!スーたんちゃんよ!」
声がデカい。
突然のことにあっけに取られるスーたん。
「おんやまぁ〜!可愛らしい!」
風呂椅子持った親玉登場。
「あ…スーたんこちらおばあちゃん」
「おばあちゃん?あ!韓国の推しの!」
「うん」
「は…初めまして!スズです!」
「スーたんちゃん久しぶりね、元気だった?
あ、今日お寿司とすき焼きするからおいでよ」
ちゃんと言わなきゃいけなかった。
「お母さん実は…」「え!いいんですか!」
え?
「いいに決まってるじゃな〜い
お買い物済んだらおいで」
「やった〜」
「なんも持ってこんでよかけん」
「はい!」
ということになった。
いいのだろうか。
「スーたんいいの?」
「え?なにが?」
「親に言いそびれてしまって…
その、同居解消したこと…
というか付き合ってると思ってるから」
「そっか…ごめんなさい
なんか嬉しくて即答しちゃった…」
いや、まぁただご飯食べるだけだし。
なんとかなるか。
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