episode 3
第40話
「千沙~、今日は図書館行くの?」
「うん、一度家に戻ってご飯作ってから行こうかなって。」
放課後、掃除当番が当たっていない私と香澄はいち早く教室を後にし、玄関へ向かった。
「まぁよくやるよ千沙も。」
「え?」
「あの性悪の九条に毎日ご飯ねぇ。」
あからさまに良くはない表情を浮かべ、下駄箱の扉はバタンと閉める香澄に、
「だから~、最初だけだったの!今はそれなりに良い人だと思ってるって話したでしょ?ご飯は私の作るついでみたいなとこあるし。」
私も弁解するかのように言葉を返す。
第一印象は確かに最悪も良い所だったけど、現にそれから苦痛な思いをしたことはないもの。
まだ1週間と少しの期間といえど…
「千沙が良いなら良いけどさ。何かあったらすぐ連絡してよ?千沙は今一人なんだから…」
「大丈夫だよ、ありがとね香澄。」
「よし、じゃあ私は真っ直ぐ塾に行くねー。」
お互いに手を振って校門の前で別の道に別れた。
香澄は学年でも1,2位の成績で、将来は医者になりたいらしくとても勉強家だ。
同じ特進クラスだけど、私はクラスではやっと一桁の順位でも学年となるとやはりそうはいかない。
志望校に合格さえできればと思いつつ、香澄を見ているともっと頑張らなきゃとも思うわけで…
塾かぁ…
少し通ったことはあるけど、父にご飯をしっかり作りたくて、結局辞めちゃったんだよね。
やっぱり時間に融通の利く家庭教師の方がよかったのかな。
なんて考えながら歩いていると、
「茅野!」
後ろからふと声がして、反射的に振り返る。
そこには、
「湊!」
リュックを背負った同じクラスの
「途中まで一緒に帰ろうぜ。」
ハニかむのその顔は、まるでテレビの向こうでよく見るアイドルのようだ。
去年から同じクラスの湊とは、一度だけ席が隣になったことがある。
それ以来、男友達が多くない私の唯一と言える仲の良い男友達。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます