第4話:せのは販売する冊数を決めるらしい
場所も決めた。サークル名も決めた。となれば、次は何を販売するかを明確に決めなければならない。
もちろん出すのは何度も記載している通り、本。「素質のなかったおにくの話」、通称「おにく」だ。安直だろう。そこが愛おしい。
しかし本を出すにしろ、決めねばならないことはたくさんある。
例えば、ページ数や文字数。これは現在佳境に入っている1章を基本的にその内容にしようと考えている。
おにくの1章は現在3/4のところまで来て、文字数は確か3.3万ほどだった。
WEB再録だけでは「気になったけどWebで見りゃええやん」になるかもしれないので、書き下ろし短編なんかも考えている。となると多分、5万文字の120Pくらいだろうか。前後はするけどそれくらいだ。
あとは本の大きさや紙の種類など。これは特にこだわりはないので、1番安いものにするつもりだった。
ページ数的にくるみ本と呼ばれる、所謂一般的に販売されている本の形を選択。この辺は友人さんたちの力を借りながら調べることができた。ありがとうフレンズ。フレンドリーフォーエバー。
で、問題はこの先だ。何冊、作るかだ。
どんなものだってそうだが、基本作る数が多ければ多いほど、その単価は安くなる。詰まるところ、利益が出やすくなる。
しかしせのは今回初出店だ。無名。戦績なし。正直、1冊売れたらドヤ顔ファンファーレが鳴り響く。
そんなせのの本……何冊、用意すべきだろうか、かなり迷った。
初めは10冊にしようとした。先ほども言ったように1冊売れたら万々歳だし、何より沢山作ってその分持ち帰るのはダメージがでかい。
想像してみよう。意気揚々と沢山本を持ってきたはいいが、会場閉鎖ギリギリまで居たにも関わらず、殆ど変わらない量を持ち帰るせのを……
哀愁。吹き抜ける北風。その背中が寂しい。
記念的なもの、趣味的なものとはいえ、やっぱほら、売れたいじゃん。手に取って欲しいじゃん。人魚なんてそんなもんさ。わかるだろう?
だから10冊にしようとした。しかしふと調べる中で「最低限必要となる本」のことを考えざるを得なかったのだ。
まずはそう、見本誌だ。
会場の中に見本誌コーナーというものがあるので、そこに1冊。そしてブースの中にお試しとして1冊準備する必要がある。
10冊刷ってマイナス2。残りは8冊。簡単な引き算だね。
で? 自分用にもほしくはないか? 実家は欲しがるぞ? 念の為確保しておいた方がいいのでは?
という訳で、更にマイナス2冊は消えるだろう。残りは6冊。
あと、調べてもよく分からなかったけど、隣のサークルさんと交換が生じたら必要じゃないか?
万が一両隣でやるとしたら、更に更にマイナス2冊。残ったのは……
うん、そうだね。4冊では心もとないね。流石にブースの中が伽藍堂だ。
初っ端からスカスカなブースを前にして「この人魚、何しに来たんだろう」となったら恥ずかしい。
それにさ「どうせ何回も出ることになるなら、在庫はあったほうがいい」という声も聞く。
事実せのは今回だけ出るということはきっとない。初出店すら終えてないのに、もう東京会場にも行きたいと思ってるくらいなのだ。
それに万が一、万が一だよ? 万が一「買いに来てくれたのに売り切れでした」となったらどうすんのさ。
申し訳ないし勿体ないし、悔しさで敷布を噛んでしまうかもしれない。通販も考えているが、やはり現地でその方の顔を見て売りたいではないか。
10冊だった場合と20冊だった計算をする。
ぽちぽち。うん、全然許容範囲。10冊を2回作るより全然安い。
残ったとしても自宅保存しておけばいいし、これくらいなら部屋を圧迫することもないだろう。上記の通り、沢山余った時にメンタルがやられることだけ強く耐え抜けばいい。
最悪それもネタになるさhahaha。後に続く者よ、せのの死体を越えてゆけ。
というわけで、せのは20冊刷ることにした。吉と出るか凶と出るかは、この時のせのにはまだわかるはずも無い。
発注はまだかけてないんだ。じっくりゆっくり、最後まで考えようと、本日は大腸内視鏡検査へ向かうのだった。
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