本を出したいなみおり日誌ー文学フリマに出たい人魚ログー

瀬野荘也

第1話:せのは文学フリマにでたいらしい

 せの。その辺の主婦であり、人間のコスプレをして生きている人魚である。

 もうこの辺りでブラバの危険を感じている。すいません、キャラ付けは大事だって聞いたので許してください。


 元々は物書きをし続け、絵描きに転向。もそもそイラストを描きつつも、最近物書きの友人さんたちが増えたので、執筆界隈にも顔を出し始めたのが簡単な自己紹介だ。


 久々の執筆。文字を書く楽しさや、文字書き仲間さんとの交流。

 物書きさん界隈は楽しいなぁ。そう思いながら物語を綴っていく最中、ふと、会話の中で気になったものがあった。



【文 学 フ リ マ】



 通称文フリ。物書きさんなら知っての通り、己が文学と信じる一次創作のお祭りである。

 メインでやり取りされるのは小説。他にも様々な形があるが、イメージされるのはやはり本。


 物書きさんなら、誰でも想像するだろう。

 自分の物語が形になり、それが誰かの手元に渡ったら……


 せのも勿論、それにときめきを感じる人魚である。人知れず出版コンテストに関して調べたりすることだってあった。


 しかしそんなせのの実力は、基本一次選考落ち。完結させた物語は短編3つ。

 完結長編、0。非公開や消去、多数。

 しかも執筆の速度は早くない。エタったことも何度もあるという、誰もが微笑みを浮かべてしまうような人魚であった。


 だがそんなせのだとしても、本への憧れは消えなかった。

 過去にコミティアや広島コミケに一般参加することもあったし、そうしたイベントに出店する友人を羨ましく見ていたこともある。参加要項を見て、出店妄想を膨らませたことなら、数え切れないほどあった。



 ホン、ツクリタイ。



 それは物書き界隈に戻る中、募っていく思いだった。

 金がかかることは知っている。赤字になることも知っている。売れないことがザラで、心折れる可能性もわかっている。

 記念的なもの。思い出を作るためのもの。


 しかしそれでも、欲望は消えない。



 ホン、ウリタイ……



 受賞歴なし。選考通過歴なし。文学フリマの一般参加経験すらない人魚。

 本の作成方法も分からず、印刷所さんも分からない。まるで震える子魚のような存在だった。


 しかし、それでも。せのは愛用のタブレットを開き、カタカタ動き始める。

 これは無謀にも文学フリマに初参加初出店を目指す、1匹の主婦人魚のログである。

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