第22話 いざお祭りへ
おはようございます。小鳥遊です。
早いもので、夏休みに入ってから一週間が経過しようとしています。明後日には8月ということで、大変複雑な心境の俺は今日も今日とて午後起床勢です。
おかげで今のところは快適な夏休みを送れています。
さて、今日も今日とてセミ公がみんみんと騒いでいますね。相変わらず、みーん民はマナーが悪いです。近所迷惑ですよもう。
みーん民の叫び声と、あとは何でしょう。なにか人の子の声のようなものも聞こえてきます。
ここは思い切って瞼を開け、様子を伺ってみましょうか。
「お~起きたか、お邪魔してんぜ~」
「小鳥遊お前なぁ、いくら夏休みだからってだらけすぎだぞ」
「あっ小鳥遊くん、これ読んでもいい?」
見慣れた顔が……3つ。
テーブルを挟んで座る男女と、漫画本片手にこちらへ近付いてくる女子。
……うん。いつもの3人だ。
俺は枕に頭を落とした。これはきっと夢だから。
「ところがどっこい、夢じゃないよ」
「……おはよう一条さん」
「おはよう、小鳥遊くん。ねぇ、これ、いいかな?」
いいかな? ってことは、読みたいんだろう。いつか買った短編。確か、小さい工場でロケットを作るやつ。
宇宙人に映画を見せようとしてたんだっけな。なんかそんな感じだった気がするけど……よく思い出せないな。また読み返さなきゃ。
「どうぞ」
しかし、なんで皆がいるんだ。今日の予定って…………ああ、あれか。お祭りか。神社の。
「ほんで出発さ、5時とかでいんでない? あんま早く行っても暑いし」
「だな」
「うん」
……起きるか。
結構長く眠っていたのか、背中が痛い。
時刻は14時を回ったあたり。要するに午後の2時。
出発まであと3時間。
「小鳥遊~、ゲーム~」
「はいはい」
丁度良い。俺も暇だと思ったところだ。
一旦顔を洗ってくるから、お前は首を洗って待ってろ。
あと廊下に立ってろ。
試合は白熱した。
俺が1本取れば笹塚も負けじと取り返し、笹塚が1本取れば俺もすかさず取り返す。まさにシーソーゲーム。2転3転する激しい展開。
が、タイマンで残機99はやり過ぎだったな。まだ残ってるけどもう5時だ。終わらないと。
残機的に俺の勝利だ。
「おら、出るぞ」
「ちぇ~、こっからだったのに」
「許せ笹塚。また今度だ」
「!」
新崎さんと和泉さんは、ずっと俺の本棚にある漫画を読んでいたらしい。
最近はシリーズものを置く場所がないから短編集とか短編ばかり買っていたけど、それが功を奏したようで、どうやら退屈はしなかったようだ。
神社に近付くにつれ、笛や太鼓の音、そして人々の喧騒が大きくなったきた。
浴衣を着た人間もどんどんと増殖していく。まるで雲の匣兵器だ。
ちなみに、俺たちは全員私服。
総数的には私服の方が遥かに多いのに、疎外感を感じるのは何故だろうな。
「こんなに浴衣の人がいるんならあたしらも着てくりゃあ良かったな。なぁりっちゃん」
「そうだね」
漫画とかアニメの祭りだと、女の子はだいたい浴衣だもんな。そんで男は私服がち。
「あっ、なああれ、紗和ちゃんじゃね?」
と、和泉さんが指指した先。
拝殿の前、狛犬の隣。
ワンピースの上から白衣というトンチキな出で立ちに、相変わらずのボサボサ頭。そして極め付きのビン底眼鏡。
令和にビン底はもう、浅見さんしかいない。
「確かに、浅見さんだね」
でも意外だな。浅見さんは一人でだろうと複数人でだろうと、こんな人の多い場所に来るような人じゃないと思うんだけど。
「……なんか心配だな。ちょっと様子見てくる」
「あたしも行くわ」
「新崎さんと笹塚は2人で待っててよ。急に全員で行ったら驚くだろうし」
「か弱い命か」
「……わかった」
4人で行くと驚くっていうのは勿論あるけど、単純に浅見さんはまだこの二人とそこまで仲良くないからな。テンパられても困るし、これが最善だろう。
そうして俺と和泉さんは浅見さんの元へ向かった。
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