第13話 もやもや
「た、たかなしくん、ちょ、ちょっと、いい……?」
「浅見さん。いいよ。どうしたの?」
「図書室の件で……」
「あぁ、なるほど。
ごめん新崎さん。笹塚達んとこ先行っといて」
「わかった」
* * *
「じゃあ今度行こうず」
「俺はいいけど、2人はどう?」
「問題ねぇぞ」
「私も、大丈──」
「あ、たかなしくん、お話中ごめんね。図書室の件で……」
「あっ、と……ごめん、少し外すね」
「図書室ゥ?」
「あの子、浅見ちゃんだっけ。
小鳥遊と絡みあったんだな」
「……最近よく一緒にいるよ」
「へぇ〜」
* * *
「じゃあそろぼち帰んべ~」
「あ~笑った笑った」
「笹塚のドベは安定だったな」
「お前も3位常連だろうが」
「あ~あ、あたしらのプレイングが神なばっかりに」
「またやろうね」
「おっ、小鳥遊……くん、帰り際にごめんな。
例のアレがちょっと」
「アレ……ああ、アレか。長くなりそう?」
「多分。10分くらい」
「あ~……ごめんみんな。待たすのも悪いから、先帰ってて」
「……」
「ん? 人手要るなら手伝うが?」
「いや、それは間に合っている」
「ふ~ん? そ?
じゃあ先帰えるわ。また明日な」
「……」
「馬鹿。明日は土曜だぞ」
「あれ? そうだっけ?」
「……」
「……ごめん、私、手伝ってくる」
「あ、マジ? ……って、新崎意外と足速いな」
「りっちゃんああ見えて運動出来るぞ」
「へぇ〜。意外」
* * *
第二書庫……小鳥遊くんと浅見さん、こんなところで、いったい何を……?
「スマンな急に」
あれ、浅見さんって、あんな喋り方だっけ?
「いや、いいよ。家帰ってもやることないし」
「お前……予習も復習もやらんのか? 勉学は学生の本分だろう。もう少しちゃんとだな」
──ッ、こっちに来る……?
「まっ待て、帰るな! 話の途中だろうが!」
「説教が始まったから、つい。ごめんね」
「勉強の話はNGか。なるほど」
小鳥遊くんは勉強が苦手……ふーん。
「で、今日はどうしたの? 言っとくけど、俺もう浅見さんに教えられることなんてほとんどないよ」
「あ、き、今日、今日な。
今日はな、えっと、その……」
「煮え切らないね。何かあった?」
「あ、いや、その……」
……なんか、空気が変。
にがくてあまい感じ。
「その、め、迷惑……か……? こう、急に、来てって言うの……」
迷惑……
迷惑か。
「迷惑じゃないけど、どうせなら、皆一緒の方がいいかな」
「なッ! そ、そんなの、ワタシを磔刑の後投石ときどき刺突で、週末には臨終だろう!!」
「何言ってんだよマジ」
ほんとにね。
だけど、そっか。
浅見さん、小鳥遊くんのこと……
「まだ機が熟していないだろう! もうしばらく友誼を結んだ相手との遊戯について、ワタシは学ばなければならないんだ! お前等の仲に混ざるのはそれからだ!」
……ああ、そっち。
「ん〜……でもさ、実地で学ぶのが一番じゃない?」
「だからそれは磔刑の後──」
「とりあえずさ、今日は一緒に帰ろうよ」
「…………お前が其処まで云うなら、仕方ないな」
「ん。じゃあ行こ。多分待ってくれてる」
あっ、来ちゃう。
ど、どうしよう……
「ん? 帰っててって、云ってたじゃないか。
何でまだ残ってるって理解るんだ?」
「いや、俺なら待ってるし、皆もそっち側の人だから」
!
「然うか……フォローは頼むぞ」
「任せてよ。
じゃあ、帰ろっか」
「ああ」
……
「っと、新崎さん」
「……」
「どうしたの? もしかして、手伝いに来てくれたとか?」
「う、うん……」
「そっか。でももう終わったんだ。ごめん。ありがとね」
「うん……」
……
* * *
漫画みたいに、ベッドに倒れ込んだ。
オノマトペは『ボフッ』。
別に、嫌なわけじゃない。
わかりきってたことだもん。
小鳥遊くんの友達は、私だけじゃない。
笹塚くんとか、せーちゃんも、友達だもん。
でも、なんだろう。何かが引っ掛かる。
浅見さんは、あの2人と、何が違うんだろう。
書庫で見た浅見さんは、普段と様子が違った。
普段は大人しい人って印象だったけど、あの時だけはハキハキと喋ってて、自分に自信がある感じ。だから、全然違う。
あれは、小鳥遊くんの前でだけ?
だとしたら、なんで?
どこで接点が生まれたのかな。
私が知らないところで、2人で何かをしていたのかな。
なんでそんな、急に接近して、秘密の共有とかいう、漫画みたいなことしてるのかな。
なんか、もやもやする。
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