心を失った旅人

第1話

それはいつの時代のことだろう。



遠い昔、1人の旅人がいた。




富の有り余る者。


今にも餓死しそうな者。


広大で透き通るような海。


木々の枯れ果てた森。




その旅人はあらゆる国々を巡り、沢山の物に触れ、沢山の人に出会った。


ありとあらゆる経験を重ねた旅人。



だけどただひとつ。



その旅人は心を失っていたのです。



何も感じず、何も思わず、ただそこにいるだけ。



放浪していく気が遠くなるような果てもない旅路。

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