第5章

一人暮らし

第1話

合格した大学は隣の県で、私は一人暮らしをすることになった。



その為、私は今荷物の整理をしていた。



18年間使っていた私の部屋は、帰省した時にすぐに使えるようそのままにしておくと親に言われた。



ありがたい気持ちはあったけれど、実家に帰って来る気など私の中にはない。



長期休みでさえも、向こうに居ようと思っていたくらいだ。



だから微笑んで誤魔化して、親の好意さえもかわした。




(あっ!これ…。)



クローゼットの中を整理していると、まーくんと別れた時に仕舞い込んだプラスチックのケースを見つけた。



しばらくそのケースを無言のままで見つめていたが、開ける勇気もなく、そのまま元の位置へと戻した。



(捨てられない…でも開けられないよ…弱虫。)



別れてから2年も経とうとしているのに、彼に対する気持ちがなくなることはない。



(でも向こうに持って行ったら、駄目…だよね。)



そのケースはアパートへ持っていかないことにした。



新しく生活をスタートさせるのに、昔の物は必要ない。



そう自分に言い聞かせて。

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