6.学校
それから更に一週間程後、登校日があった。
自由登校期間なのに登校しなきゃいけない日があるなんて。と不満をこぼす僕とは逆に、雪は嬉しそうだった。
こんな頃には「光輝くんは学校に友達とかいなさそうだねえ」なんていう彼女とのこの生活にも慣れて、彼女にタメ口を使うどころか、彼女を無視することだってできるようになった。
「学校では話しかけないでね」と言うと返事はなく、ただ僕の少し後ろを学校までついてきた。
教室に着くと、並べられた机の半分くらいは空席で、僕が話せるような数少ない同級生は皆休んでいた。かと言って、きてたとしても二言三言話すくらいなので特に変わりはないのだけど。
誰とも話すことなく、教科書をパラパラとめくる。空気のような存在の僕をみて雪は「ゼロとは思わなかったよ」と、この世の終わりでもみたかのような表情を浮かべていた。
学校にいる間は、当然雪に対して話しかけることも、返事をすることもできない。お喋り好きな彼女からするとそれは、とても退屈なことだったらしく、家を出る時までの元気は失われていた。
そんな彼女は自分の体が僕以外には見えていないこと、全てをすり抜けられることをいいことに、教壇に立つ教師と重なって笑わせてきたり、女子のスカートの中を覗きこんでは僕に「あの子は黄色」「あの子は黒のセクシーなやつ」などと耳打ちして僕の反応を楽しんだりと好き勝手していた。
静かに一人で肩を振るわせる僕をみて、同級生たちはさぞ不気味だったと思う。
耐えきれなくなり、周りに気づかれない程度の手招きをして、彼女を呼んだ。
「やめろ」机の下でスマートフォンにそう打ち込んで見ると、元気を取り戻した彼女は「コウキくんは悪知恵が働くねぇ」なんて言った。
中学生の頃、クラスの女子が授業中に手紙を回していたことを思い出して、仲のいい友達がいたらこんな感じだったのかな。なんて考えていたら、すぐに授業は終わった。
早めに授業が終わった他のクラスの生徒は、僕らがホームルームをしている最中に、既に帰宅準備を済ま教室の外に出てきていた。
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