第1話
彼女について
春、桜が風で散っていく。桜吹雪に歓声が上がった。その中にいながら、スポットライトが当たっているかのように彼女が浮かび上がる。
俺はその桜の下に一人で立っている彼女の姿に釘付けになった。
桜を見上げたマロン色のボブの髪が風になびく。
高校の入学式とは言え、中学からのエスカレーター式でほとんどが顔馴染みだから、誰かしらといるのが当たり前なのに、たった一人で、桜の下、空を見上げていた。数少ない外部生にしたって、親と一緒にいるはずだというのに。
俺は思わずみんなの輪から抜けて、彼女の方へ歩いて行った。
桜をじっと見つめる彼女に声もかけられずに見惚れていた。
「ゆーきー! 写真」と仲間に呼ばれて、俺は彼女に背を向けて仲間の方に戻った。
その声で彼女がこっちを見たかもしれない。でもそれを確認するのも何だか気まずく思う。
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