ちきゅうじんの男の子が、うちゅうじんのお姫様を幸せにするラブコメ。~こんな青春も悪くはないだろう~

ブサカワ商事

第一部 うちゅうじん、襲来。

第一章 『うちゅうじん』との出会い

Episode001 『うちゅうじん』の少女との出会い

――この世界に宇宙人なるものが存在しているのか?


俺はこの手の質問をされたときは、間違いなく「NO」と答える。

だって、もし本当に存在しているんだとしたら、俺たちの生活は、地球人だけで営まれているなんてことにはなってないだろう。

それこそ、上位種族による植民地化とか、そういうことが起こるに決まっている。

隠密に暮らしているだけの可能性だってあるが、そうやってほぼ人間と変わらない生活を送っている以上は、もう地球人とそう大差ないだろう。

たとえ、体の構成や物質、価値観が違ったとしても。

……なんて馬鹿げたことを考えながら、俺――宇地間 愛枢人うちま あすと――は今日も学校からの帰路を歩み続ける。


* * * * * * * * * * * * * * * * * *


俺はこの春に2年生になったばかりで、今日は新しく1年生のメンバーを加えた『宇宙研究部』の1回目の活動があった。

『部』なんて言ったが、メンバーは俺を含め3人、顧問の先生もいなくて、もはや『同好会』と呼んでも差し支えないレベルではあるのだが。

なんでも、昔は俺の通う高校――星宙高校ほしぞらこうこうで一番人気の部活だったらしいが、屋上を使って天体観測をする、学校で寝泊まりするタイプのイベントがなくなってから、勢いよく人気がなくなったらしい。

まあ、人気がなくなったのはそればかりではなく、それをなくすことになった元凶でありながら、現在進行形で『宇宙研究部』の部長をしている先輩の所為だが。

その人は、一年生のときに、「そんな活動内容で宇宙が研究できてたまるか!」などと言い、色々と勝手に方針を変えようとした結果、仲間がいなくなったとのこと。

確かに、『天体観測』は、大して宇宙の研究にはならないかもしれないけど、わざわざそこまでする必要はなかった気もする。

でも、今言われると、「何だかあの人らしい気はする」と思えてしまう自分が憎い。

噂も知らずにそんな部活に入部しようとした俺も大概だけどな。

そんなことを考えながら、俺は満点の星空を仰ぐ。

東京は光が強い所為で星空が見えないイメージがありがちだが、実はそうでもなく、都心から離れていると、ある程度綺麗に星が見える。


「……今日も綺麗だなぁ……」


俺はそう独り言ちながら、さっさと家へ歩みを進める。

どうせ何もすることはないが、今日だって勉強をして、宇宙を研究する道を諦めることになる未来だけは避けなければならない。

……そう思うと、『天体研究部』みたいだったらしい『宇宙研究部』の活動を丸ごと蹴った部長は、何か考えがあったんだろうか。

十分に宇宙を研究する内容だったと思うんだが。

そう思いながら、足元に気を付けつつ、俺は星空を見ながら、ただ真っすぐ歩く。

だが、そのときだった。

俺が異常に気付いたのは。


「……ん? 何だありゃ?」


俺は、星空の中に、光りながら流れていく流星を見つけた。

それは強く光を発し、映像で見たことのあるどんな流星よりもゆっくり流れている。

この時期に流星が来るなんてニュースは聞いてないが、そんな突発的に流れてくるものだっただろうか。

俺は違和感を覚えながらも、綺麗だしまあいいかと、そう割り切ることにした。

しかしそこで、ソイツを見ていた誰もが予期していなかったであろうことが起こる。

なんと、俺たちの街……というか、ちょうど俺のいる方角に急カーブしたのだ!


「えっ!? ウソだろ!?」


俺は叫び声を上げつつも、咄嗟に走り出す。

流星じゃなくて隕石だったとは……と思うものの、建物の中に入ってうずくまっていれば、もしかすると助かる確率だって0じゃない。

そう思い、ただただひた走る。

正直、こんなところで死にたくないし、流石にじいちゃんの言いつけである「童貞のままで死ぬな」だけは守り通したい……!

と今思うことではないようなことを思いながら、チラッとソイツを見たが……。


「なんかめっちゃスピード上がってるじゃねぇか! 死ぬわこんなん!」


俺は自分の目を疑いつつも、それを現実と受け入れ、もっと精一杯に走る。

近くなってきている所為とか、ソイツの先端がコッチを向いてる所為とかあるんだろうけど、あれはほぼ間違いなく、勢いを強めている。

だが、もうあと30秒もこの速度で走り続ければもう家に着く、つまり、俺の安全はある程度保障されるということだ。

だが、正直なところ、ソイツの落下に間に合う気がしない。

ああ、もう俺の人生はここで終わりなのかもな……。

……と、絶望していたのだが。


「……え?」


俺が絶望の眼差しで流星――かどうかもう怪しい――を見ていると、ソイツは変に空中で曲がりくねった軌道を描いた後、この住宅街で唯一の公園のある方面に思い切り突っ込んでいった。

思わずその場にしゃがみ込んで耳を塞いでしまったが、そのまま30秒と待っても爆発音も閃光も何も来ない。

いや、何もないんならそれはそれでいいんだが、何が起こったのか知りたいんだが。


「……仕方ない。公園行ってみるか……」


事の顛末が知りたい俺は、結構危険な行為だと思うが、謎の物体(もう隕石とは思ってない)が落下した公園に行ってみることにしたのだった。


* * * * * * * * * * * * * * * * * * *


歩いてほんの1、2分のところに、その公園はある。

遊具がそう多いわけでもないが、そこは、普段から多くの子どもが遊んでいる。

斯く言う俺も、昔はよくその公園で遊んでいたものだ。

幼馴染も友達もいなかった俺からしてみれば、このある程度遊具のある公園というのは、俺にとっては友達も同然かもしれない。

さて、公園には何が待ち受けているんだか。

まさかとは思うが、本当に宇宙人の類とかじゃないよな……?

俺はまだ宇宙人の存在を信じてないからな?

そう思いつつ、俺は公園の目の前まで来たのだが……。


「……え?」


俺は、目の前の光景が何一つとして理解できなかった。

公園には、当然と言わんばかりに、真ん中の広場に、車くらいのサイズがある、楕円形の謎の乗り物らしき物体が鎮座している。

それは誰が何と言おうと、『UFO』としか言いようのない、そんな感じのものだ。

……そして、それの傍で伸びをしている、この世界の誰より美麗な、1人の美少女。


俺は、一目惚れというヤツを、恋というヤツを、知ってしまった。


次回 Episode002 『うちゅうじん』との邂逅

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