第4話

 その後、何度もライブを行った。


 女子高生という事もあって協力的な人も多く、三年生になる頃には地元で少し名の知れたバンドになっていた。

 ただ私は正体を隠し続けた。


 それが、絶妙に愉しかった。



  ◇  ◇  ◇



 「これ応募してみようよ!」


 ほのちゃんのスマホに表示されていたのは『高校生バンド天王山』というサイト。

 コンテストに応募したいらしい。

 一次審査は動画審査。


 特に反対意見が出る事も無く参加が決定した。



  ◇  ◇  ◇



 「1次通ったよ!2次はライブ審査!」


 何の事だか分からなかった。

 詳しく聞いて、コンテストの1次審査を通過した事を理解した。

 ただ、ほのちゃん以外はそこまで歓喜した訳でも無かった。


 「2次はライブなんだ。優勝するとメジャーデビュー?」


 ゆかちゃんが適当な感じで言う。


 「よく分かんないけど、あるかもねぇ」


 ほのちゃんは含みのある笑みを浮かべる。


 「へ~!大勢の人が見るなら、さっちゃんのメイクも気合入れないと!」


 このちゃんはブレない。


 「”偃月”のままでも良いの?」


 私は晒される事を危惧した。


 「問題無さそう。”芸名”でも良いみたいだし」

 「芸名って!でも、そっか。咲はそうだったね」

 「うん、そうなんだよねぇ……」


 苦笑いで答えた。



  ◇  ◇  ◇



 2次予選ライブ審査。

 『JKB』は通過した。



  ◇  ◇  ◇



 『高校生バンド天王山 決勝大会』


 東京に来た。

 会場は『ZIPP』。

 多くの有名アーティストが立った場所。

 その場所に、予選を勝ち上がってきたバンドが集まっていた。


 本選が始まり、事の大きさを理解した。

 あまり空気を読まない(読めない?)ほのちゃんですら、口数が少ない。



  ◇  ◇  ◇



 出演しているバンドの演奏を観ながら考えていた。


 圧巻の技術力や独特な世界観……同年代が演奏している事には驚いた。

 ただ……技術だけならもっと上手い年上のバンドも見てきたし、もっと不思議な世界観のバンドも居た。

 そこには”同年代”というフィルターがあるとも感じていた。

 勿論、馬鹿にしているわけじゃない。

 私達に同じ事は出来ないだろう。

 でも――



  ◇  ◇  ◇



 『JKB』の出番。


 準備を終えて『KONOHA』がカウントを始める。


 ――私は偃月。ここの女王――



  ♪  ♪  ♪



 結果発表を待っていた。

 だが、少しどうでも良くなっていた。

 私はいつもより深く"自己陶酔"出来ていたと思う。

 それだけで心地よかったし、満足出来た。



 「……結果を発表します」


 司会は仰々しく結果発表を始める――

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