アドバンッ!!~Bloom story~【超圧縮版】

麻田 雄

第1話

 ――高校一年 秋――


 小さな頃から地味だった。

 目立とうという気持ちも、要素も無かった。

 でも今日は、ある想いを胸に楽器店に来た――


 下調べは終えている。

 ネットの方が安いけど、親にはバレたくない。


 商品が入っているガラスケースの前で店員さんを待っていた。

 挙動不審に⋯⋯。

 万引きGメンでもいたら疑われそう。



 「あれ?ひょっとして遠月とおつきさん?」


 突然声を掛けられ『えっ?何っ!?』と、完全にテンパった。


 「すすす、すみません。見逃してください」


 深々と頭を下げた。

 傍から見たら完全な”黒”。


 「え!ええっ!?」


 声を掛けてきた人が慌てる。

 頭を下げていた為、誰だか分からない。

 声からして女の子?


 「お待たせしました」


 今度は男性の声が聞こえた。

 多分、店員さん。


 尚も下げた頭を上げられない。

 そして、頭を下げたまま声とは逆方向に走り出した。

 ――が、躓き激しく転倒。


 「大丈夫ですかっ!?」と、慌てる(多分)店員さん。

 顔を上げ視界に入ったのは……確か、同じクラスの前澤まえざわさん?



  ◇  ◇  ◇



 「まさか遠月さんと会うとは思わなかった」


 前澤 穂乃花ほのかさんは明るく話し掛けてくる。

 私はこの世の終わりとすら感じて落ち込んでいるのに……。


 「うっ……うん」

 「配信とかやってるの?」


 前澤さんは訊ねてくる。

 そう思われてもおかしくない。


 「かっ……家族に頼まれて」


 やや的外れな返答の上に、買った物を知られている。


 「じゃあ、家族の人がやってるの?」


 尚も喰いついてくる。

 とにかく、話題を逸らしたい。


 「か……家業の関係で」

 「えっ!家業!?」


 逸らすつもりが興味を持たれてる!?

 もしかして正直に言った方が楽?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

アドバンッ!!~Bloom story~【超圧縮版】 麻田 雄 @mada000

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画