僕を傷つける、悪い二人組の男
「やっぱり僕は、竜なんて知りません。仮に知っていても、お前達になんて教えてやるもんか」
僕は、はっきりと言ってやったんだ。
お前達なんかに、絶対に負けない。
「……ニンゲンの分際で、いい度胸だ。なら今すぐ……」
「待て。まずは居場所を吐かせてからだ」
獰猛な笑みを浮かべ、飛びかかろうとした男を、もう一人の男が止める。
どうするつもりかは分からないけど、僕は口を割ったりは……っ!?
「ああああああああ!?」
「フン。ニンゲンでも、いい悲鳴を上げるじゃないか」
そう言うと、男は鼻を鳴らし愉快そうに口の端を吊り上げる。
どうやったのかは分からない。でも、僕の右の太ももには穴が空いていた。
「さあ吐け。あの女はどこにいる」
男の一人が僕を地面に押さえつけ、もう一人が僕の右手を持った。
「し、知らな……」
――ぺきっ。
「あああああああああああああああっ!?」
男が容赦なく、右手の人差し指を折った。
「居場所を言え」
「だ、誰が……」
――ぽき。
「ひぐぅっ!?」
「あの女はどこに」
「知る……もんか……っ」
――ぱきょ。
「~~~~~~~~~~っ!?」
僕が拒絶するたびに、中指、薬指と順に折っていく。
気づけば右手の指は全て折れてしまい、男は今度は左手を持った。
「変な奴だ。ニンゲンはこうしたらすぐに泣き出して簡単に吐くと聞いていたんだがな」
「あ、はは……残ね……ん」
――ばきぼきめきぐちっ。
「ぎゃああああああああああッッッ!?」
男は左手を一気に握り潰し、僕の悲鳴が暗黒の森にこだまする。
これで僕の両手は、使い物にならなくなった。
でも……穴の空いた太ももを含め、
とはいえ、このままだと僕は二人に殺されてしまう。
だったら……最後まで
「えへ、へ……こんな、こと……して……いいのか、なあ……」
「? 何を言っている」
薄ら笑いを浮かべながらそう言ってやると、男は不思議そうに首を傾げた。
「こ……こう見えて、僕……ハイリグス帝国、の……第六皇子、なんだ……。その証拠、に……か……ばんの、中……にある、印状を……見て……ごらんよ……」
男は僕を押さえつけているもう一人の男に目配せをすると、
あの紙には、僕が暗黒の森の領主であるという、皇帝陛下の署名と押印がされている。
「……何と書いてある」
「ぼ、く……が……この森の領主、だと……認める、もの……だよ……」
「この森がニンゲンのものだと? 馬鹿を言え」
「あ、はは……は……馬鹿、は……お前達、だよ……。皇子、の……僕に……こ、んな……真似、を……した、んだ……。帝国、は……お前、達……を……絶対に、ゆる……さない……」
もちろん、ハイリグス帝国は僕を救いになどやって来ないし、報復などしない。
むしろ僕が死んで喜ぶだけだろう。
それでも、暗黒の森の領主であること、それを皇帝陛下が認めたことは間違いないし、その証拠もちゃんとある。
要は、この男達に僕が手を出してはいけない人物なのだと、信じ込ませればいいだけ。
「お前、達……が……何者なのか、知ら……ない……けど……覚悟、しろ……。帝……国の、十……万、を……超える……軍勢、が……この森、を……焼き、尽くす……。そ、う……した、ら……お……前達、の……主、は……どうおも、う……かな……?」
「「…………………………」」
さっきからの態度や文字が読めないことからも、おそらくこの二人は人間じゃない。
だからやたらと人間を下に見ているし、言葉の端々からそれが
それでも、あの竜にこの二人だけで戦っているとも考えにくい。
きっとその背後に誰かいる。そう思い、かまをかけてみたけど……二人とも、どうすればいいか悩んでいるみたいだ。
「い……言っと、く……けど……僕、を、殺し……て……隠し……た……ところ、で……無、駄……だよ……。定期、的……に……ここに、は……帝国、の……使い……が……来るん、だ……。行方、不明……だ……と……わか、った……時点、で……帝、国は……行動、に……出る……」
ここまで念を押しておけば、もう二人が僕を殺そうと考えることはないだろう。
それは、二人の表情や態度が物語っている。
「ちっ……行くぞ」
「ああ……」
僕を拘束していた男が手を離し、二人は森の中へと消えて行った。
とりあえずこの場は凌いだけど。
「す、すぐに……あの竜の、ところ……へ……」
回復魔法を使うと、両手と右の太ももを淡い光が包み、すぐに傷や骨折が癒えた。
やっぱり思ったとおり、
「急がなきゃ!」
僕はすぐに竜のもとへ急行するために、思いきり地面を蹴って駆け出した。
その時。
「どうして……」
「っ!?」
とても綺麗な女性が、木の陰から現れた。
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