中二戦記、我ゆえに!

ギガざむらい

闇夜に響く我が威光





夜の広場で、風が冷たく吹き抜ける。その風の中、闇色のローブをまとった少年が、ひとり孤高に佇んでいた。


「我こそは影山黒刃、闇より生まれし“終焉の支配者”…そう、またやってしまったようだ我ゆえに!」


誰に向けるでもなく、彼はその決め台詞をつぶやく。視線を虚空に投げかけるその姿は、彼にしか見えない何かと戦っているかのようだ。周りを歩く人々は一瞬視線を向けるが、すぐに目をそらしていく。


その時、一人の少女が足を止めた。彼女の名前は紅葉。街の占い師見習いで、噂話を聞くと確認せずにはいられない性格だ。


「ねえ、本当にあなた“終焉の支配者”なの?」


黒刃はその言葉にニヤリと笑い、満足げに彼女を見つめる。


「当然のことを問うな…そう、またやってしまったようだ我ゆえに!」


紅葉はクスリと笑いながら、首をかしげる。


「なるほどね。で、その力、見せてくれる?」


挑発的な彼女の言葉に、黒刃は少し動揺しながらも、胸を張り手を掲げる。しかし、ただ風が少し揺れるだけで、何も起こらない。


「うーん、見たところ…風を操れるってことなの?」


紅葉は意地悪そうに聞き返すが、黒刃にはその皮肉が伝わらない。「ふっ…そうだ。我の支配する力だ、恐れおののくがいい!」


彼はそう言って立ち去り、紅葉はその背中を見送る。彼の言葉がどこまで本当なのか気になる一方、彼の不思議な魅力にどこか惹かれているのも事実だった。



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翌日、街に不穏な噂が広がっていた。街外れの森に魔物が現れ、住民たちが恐怖に震えているというのだ。人々は不安に怯え、商人たちは店を閉じようとしていた。


その時、広場で昨夜と同じ黒刃の姿が見られた。紅葉が声をかけると、彼はまるで待っていたかのように振り返った。


「ふっ、またやってしまったようだ我ゆえに!」


「えっ…何が?」


「我が存在が魔物を引き寄せてしまったのだ。我こそが暗黒の支配者であり、この地を守る“終焉の盾”だからな…我ゆえに!」


彼の自信に満ちた言葉に、紅葉は一瞬目を丸くする。しかし、すぐにからかうように続けた。


「じゃあ、その魔物を倒してくれるのよね?」


「ふん、当然だ。我の使命を果たすために、我が力を解放するのもやむを得ない…またやってしまったようだ我ゆえに!」


決意を新たにした黒刃は、周囲の注目を集めつつ森へ向かっていった。紅葉も半信半疑ながら、その後を追うことにした。






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森の奥に入ると、凶悪な表情の魔物が二人の前に立ちはだかっていた。巨大な体と鋭い爪、目は血走り、今にも飛びかかってきそうな勢いだ。


黒刃は、魔物に対してゆっくりと手を挙げ、堂々とした態度で語りかける。


「さあ、これが我が“終焉の闇”の力!またやってしまったようだ我ゆえに!」


彼の叫びが森に響き渡るが、魔物は微動だにしない。紅葉が少し不安げに後ずさるが、黒刃は表情一つ変えない。手のひらから何かが放たれることを期待していたが、やはり風がそよぐ程度である。


魔物がついに彼に飛びかかってきた。その瞬間、黒刃は反射的に大声で叫んだ。


「くっ、封印を解かざるを得ないようだな…!」


「我が秘技、終焉の一閃!!」


手を魔物に向かって振り下ろす。


「がぎゅう!」魔物の悲痛な言葉と共に縦に切り裂かれていた。


だが私は知っている。彼の手の動きと共に何処からか降ってきた斧が当たっただけだと。

だけど私は彼に教える事はない。

彼こそ、漆黒の支配者なのだから。


魔物を倒した事が街の人に知られ、彼の知らぬ所で彼は評価されている。

今では街の人達の目線は、尊敬する紫線すら、ある。


「また、何かやってしまったようだな、我ゆえに!」



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このようにして、黒刃は自らの力を発揮した気でいるが、実際はいつも勘違いによって物事が解決していく。紅葉は彼の世話焼きながらも、自分にまっすぐ生きる彼の魅力に少しずつひかれていくのだった。




あとがき


次のエピソードでは、黒刃の存在がますます街で注目され、勘違いによる事件がさらに複雑に絡み合っていきます。


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