【アプグレ】商店街Lv1:モールLV3

 【施設:コンビニ たぬきマート】は施設の中でも大当たりだった。

 国内各地の人々がこのザラキアを馬車で訪れ、コンビニで買い物して、自販機とガシャポン・ポンを楽しんで、ロリババァに有り金搾り取られて出て行った。


 来期からはもっと移住者が増えてくれそうだ。郊外の住宅街が突貫工事で成長してゆく姿を、これから眺めることができるだろう。


 しかしこの施設の建設により、建設上限の6/6に達してしまった。今のところこの上限の解放方法はわからない。


 ならばここから先は、既存の施設をアップグレードしてゆくことになる。

 僕は銀の目の力で内政システムを起動して、アップグレードの項目を確認した。


 残金は2561金。既存施設のアップグレードのコストは以下の通りだった。


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【内政施設アップグレード】

 【畑】

  Lv2【費用:金400】

     【効果:兵糧400(月)】

 【商店街】

  Lv2【費用 金800】

     【効果:金100(月)】

  Lv3【費用 金1600】

     【効果:金200(月)】


 【職人街】

  Lv2【費用 金400 人材5】

     【効果:金200(月)】

 【ドロイド試作所】

  Lv2【費用 金1000 人材10】

     【効果:効果:ドロイド人口25(月)】


【内政施設(たぬき)アップグレード】


 【自販機&ガシャポン・ポン】

  Lv2【費用 金1800】

     【効果:金200(月)】

 【コンビニ ファミリー・タヌキ】

  Lv2【費用 金4000】

     【効果:金400(月):兵糧800(月)】

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 最高効率は【職人街Lv2】アップグレードだ。しかしザラキアの現在の【人材】値は0。これが5に増えないとアップグレードはできない。


「何それー、不公平なんですけどー……?」


<「 ポンちゃんは賛成もきゅ 」


<「 ニジエールさんたちにはお世話になってるもきゅ 」


「ただの悪徳商人だよーっ、あの人たちーっ!」


 よって正しい投資先は【商店街】となる。これを一気に2段階アップグレードして、Lv3にしてしまう。


「逆に考えよう。もっとアップグレードして、あの人たち以外の商人を呼び込もう」


「だったら質問! アップグレードするとどうなるのー?」


「施設が立派になって収益が増える。……と思う」


「もう1つ質問! そうしたら、そしたらまたとんでもないことが起きるの?」


「うん、これまでのパターンからすると、また現実が改変されると思う」


 その結果、ニジエールさんたち恐怖のロリババァ8人衆がどうなるか、恐ろしいところではある。……倍々に分裂して、ロリババァ32神将となる可能性もないこともない。


 けれども仕方がない。僕の力はこういう力だ。そしてもう、お金を借りてしまった後だ。もはや後には引けない。

 あの商店街があらゆる並行世界のニジエールさんを集めたロリババァ・バースになろうとも、僕はお金が欲しいのだ。


「そりゃ、うちの彫金工房としては美味しい話だよー? あの人たち、うちのお得意さまだしー……」


「そんなに悪い人たちじゃないよ」


「うちの工房を優先して欲しいなー……」


「それは約束するよ。人材が集まり次第、ロゼッティアたちの工房をカッコよくて便利なやつにアップグレードする!」


「本当ー!? じゃあおっけー!」


 話がまとまると俺は休憩所の席を立ち、街道をはさんだ反対側にある【商店街】を見た。

 立派すぎる馬車駅、ガラス張りのコンビニ、目立ちすぎる自販機&ガシャポン・ポンコーナーの前に、当然のごとく見劣りしている。


 金に魂を売った僕は、アップグレード画面を操作してロリババァの巣窟を一気に2段階成長させた。


――――――――――――――――――――――――――――――――

 【商店街】Lv1をLv3にアップグレードしますか?

 →・是 ・否


 ザラキア領主:アルト(50/100)は【商店街】のアップグレードを進めた!

 成功! 建設度が100%となり【商店街】Lv1は、【モール】Lv3となった!

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 一気に2段階も成長させると、見劣りしていた商店街に劇的な変化が起きた。

 8つのロリババァの巣窟が合体し、1つのモールに進化したのである。


 建物の大きさは1階建て、一辺150メートル四方を超えているように見える。

 外壁の配色は青と白。向かいの『たぬま』に対抗してか、ガラス張りの大窓まである。


 週末になればここに家族連れが集まって、己のリア充っぷりをかけて覇を競わんばかりの、『コー○』とか『イ○ン』とか『○イエー』を彷彿とさせるご家族様向け空間がここに発生するだろう。


 え、『ダイ○ー』はもうない?

 え、マジ? じゃあ『ジャ◯コ』は?


「ちょっ、ちょっ、ちょっ、ちょっとあれ何ぇーっっ!?」


<「 ゲームセンターの匂いがするもきゅぅ……! 」


<「 お菓子のクレーンゲームを所望するもきゅぅぅっ! 」


「いくらなんでも大きすぎるよーっ!? ザラキアの経済規模に絶対あってないよっ、あんなのーっ!」


 言えていた。果たしてこんなバカデカモールを建てて、採算が合うのか?

 今のザラキアの労働人口で従業員が足りるのか?


 ちょっと不安になったので確認してみた。


――――――――――――――――――

【モール:Lv3】

 【効果:金131(月)】

 【労働者 42/64】

 (現在のザラキアの【求職者】0)

――――――――――――――――――


 【求職者】が豪快青田刈りされていた。【人材】もまた現在は0だ。

 領地ザラキアはまだ成長の可能性と投資の余剰金残しながらも、たった今労働者不足による停滞に陥っていた。

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