【建設】自販機&ガシャポン・ポン:たぬき
このたぬきは、ただのたぬきではない。僕の領地に自販機とガシャポン・ポンとコンビニとスパとダンジョンを作ってくれる、神様たぬき(社畜)だ!
見える! 僕には見える!
午前の政務を終わらせた僕が、優雅にリゾートスパの湯に浸かる姿が!
そしてその後は自販機! そこで『ぷぃぃーっっ』と炭酸飲料をキメてから、ガシャポン・ポンコーナーをそぞろ歩きする!
そしてその後はコンビニだ! おむすび、ラーメン、チョコレート、マンガ雑誌! 嗚呼、僕の未来はバラ色じゃないか!
そんな熱い希望を胸に、僕はテラスから我が領地ザラキアを一望した。
ザラキアは山と湖に挟まれた美しい平地帯だ。南方を高く険しいリンテ山脈、西方を雄大なアイラン湖、東方を底なし沼で有名なダーネル湿地帯に囲まれている。どれもが強固な天然の要害だ。
しかし今のザラキアは荒廃している。
放棄された農地、住居、それに紛れるように残る石造りの古戦場跡。これまでに数多くの戦争、小競り合いがザラキアを襲い、暮らす者の都合など無視してここを焦土に変えてきた。
そんな見捨てられた地ザラキアを、僕とポンちゃんは生まれ変わらせる!
安全で愉快な観光だってできる鉄壁の都市に!
<「 ポンちゃんは、商店街の隣がいいと思いますもきゅ! 」
「うん、僕も同じことを考えてた。あそこにガシャポン・ポンを置いて街の中心にしよう」
<「 ポンちゃんのお店が中心もきゅ!? 」
「そうだよ、ポンちゃんのお店が未来の一等地になるんだ」
この前の建設では、十字路の周囲4カ所にしか建設候補にできなかった。
それが今では【設備:商店街】の北と西のマスが光っている。
さっき内政画面を見たときは『【施設数】2/6』 となっていたので、あと施設を4つ建てることができるようだ。
「それじゃ、やるよ!」
<「 ポンちゃんたちのためにも、立派な施設をお願いしますもきゅ! 」
「建設ポイントは商店街の北! 帝都ホワイトアークに続く街道沿い! あそこに決めた!」
僕はそのポイントを指さした!
――――――――――――――――――――――――――――――――
ザラキア領主:アルト(100/100)は【自販機&ガシャポン・ポン】の建築を進めた!
成功! 建設度が100%となり【自販機&ガシャポン・ポン】が完成した!
土地整備により木材17を獲得! 石材1を獲得!
――――――――――――――――――――――――――――――――
建設地点には使う者のない廃屋と、草もまともに生えない荒れ地があった。
それが光輝く粒子となって消滅し、地面から柱が立ち上り、その上に平たい屋根が生えて、さらに屋根の上に奇妙なオブジェクトが乗った。
<「 素敵、素敵もきゅ! ポンちゃん、信じてたもきゅ! 」
<「 屋根のあれっ、すごくいいもきゅ! あれ、ポンちゃんもきゅねっ!? 」
それはたぬき像だ。建物の屋根からはみ出さんばかりに、たぬき像が『ぐでーー』っとタレていた。
「え、これ、ポンちゃんがデザインしたんじゃないの……?」
<「 ポンちゃんは何もしてないもきゅ 」
<「細部まで全て、ご主人様のイメージもきゅ 」
「そう……。うわー……すごいの作っちゃったなー、これー……」
【施設:自販機&ガシャポン・ポン】には壁がない。
柱だけで屋根と巨大タレぽんちゃんを支える、風通しのいいアミューズメントコーナーだった。
<「 見に行きましょうもきゅ! 」
<「 仲間が、補充をするところ、見れるかもしれないもきゅ! 」
よくわからないけど行けばわかるさ、この道を。
たぬきを胸に抱いて僕は屋敷を駆けて、『ロリババァ遭遇注意』の看板が必要な街の中心に向かった。
・
――――――――――――――
【自販機&ガシャポン・ポン】
【効果:金100(月)】
【労働者 0/0】
――――――――――――――
到着早々、施設の鑑定を行った。
やった、広告塔のたぬきが悪目立ちしすぎだけど、これで税収大幅アップだ。
<「 自動販売機に、耳が付いてるもきゅ! ご主人様、こういうのが、お好きもきゅね! 」
「ち、違う……」
近くで見るとさらに物凄かった……。
その施設の広さは150メートル四方。その広さにまたがる巨大たぬきが軒先の僕たちを見下ろしていた……。
おまけに自販機に耳がある。ごんぶとの尻尾がある。対照的にガシャポン・ポンの方は標準的な筐体だった。
<「 あ、きましたもきゅ! ポンちゃんの仲間たちもきゅ! 」
「仲間……? うおっ!?」
どこからともなく半透明に透けるたぬきが現れた。それが実体を持ち、肩に大きな袋をしょって、自販機やガシャに商品を詰めてゆく……。シュールだ……。
袋が空になったたぬきから、ポンちゃんを取り囲んでいった。
『ピャーッ!』『ピャーッ!』『ミャッ、ミャーッ!』『ギャオォォ?』『ピャーッ!?』
突然始まったたぬきの井戸端会議。勿論でございますが、何言ってんだかわかんねぇ……。
果たして人間がこれを見ていていいものなのかと、物の怪どもの百鬼夜行じみた光景に僕は距離を取った。
<「 あ、ご主人様、どちらへ? 」
「そ、そいつら、いったい、何……?」
<「 ポンちゃんの元同僚! 輸送班の皆さんもきゅ! 」
<「 今、『生きとったんか、ワレェ!』言われてますもきゅ! 」
「その同僚たち、どこからきたの……?」
<「 倉庫からもきゅ! ラクーン商会は、多次元商会もきゅよ! 」
僕、知らなかった……。
たぬきって、人類より科学技術が発展していたんだ……。
僕は一人の人類としてたぬきに深い敗北感を覚えた……。
「おお、そこにおるのは坊やではないか。そなたも休憩か?」
「ゲェッ、ロリババァッ?!」
「失礼な坊やじゃ。ニジエールと呼べ」
たぬきばかり見ていると、自販機の前にニジエールさんが立って財布を探っていた。
ニジエールさんはちっちゃかわいい。しかしその見た目に騙されてはいけない。彼女は押し売りの達人でもある。
「もう物干し竿は買わないよ! 1本100シルバーとか嘘じゃないか!」
「ひっひっひっ、愚か者め。確かにわらわは1本で100シルバーと言ったが、常識的に考えてみろ。物干し竿が100シルバーで買えるわけがなかろう」
ニジエールさんは10シルバー銅貨を3枚出した。
3枚の硬貨は自動販売機に投入され、甘くて辛くてちょっとえぐい健康飲料『毒マムシ』がニジエールさんに購入された。
僕が建設する施設は現実を改変する。
説明もしていないのにニジエールさんは自販機を使いこなしていた。
てか、よりにもよって『毒マムシ』かよ、ニジエールさん飲み物の趣味悪すぎ!
「くぅぅぅーっっ、労働の後はこれじゃこれじゃっ!」
「それ、ぶっちゃけ、不味くない……?」
「これの味わいがわからぬとは、坊やもお子ちゃまじゃのぅ……」
「ところでニジエールさん、この自販機……いつからここにあったっけ?」
「何を言っておる。自販機なら昔からここにあったじゃろう」
「そ、そうだったっけ……?」
ニジエールさんは子供みたいにワクワクと肩と腰を揺すって、別の自販機に駆け寄った。
「ひっひっひっ、今日はヌードルもいってしまうかのぅ……! じゃが、バーガーもよいのぅ」
「ヌードル? バーガー? わっ、本当にあるっっ!?」
「よし、おぬしバーガーを買え。半分はわらわが食べてやる」
「う、うおっ、おっ、おおおおーーっっ!? 餃子にアイスッ、記念コイン、卵、新聞!? ここってレア自販機のワンダーランドッ!?」
ラクーン商会驚異の流通力! たぬき、恐るべし!
王道からゲテモノまで、俺の知りうるありとあらゆる自販機がそこにあった!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます