ラスト・オーナー
ロバートソン
第1話
僕にはお気に入りの時計がある。三つのダイヤルが回転して時刻を表示する少し変わったデジタル時計だ。
販売当時の70年代に少し流行ったモデルらしい。いつだったか知り合いにプレゼントとしてもらったものだ。この時計にはある変わった機能がある。
右上のボタンを押すと三つのダイヤルが同時に回転し、三回転した後元に戻る。カシャカシャ言いながら動くのが男心をくすぐる。まるで実用性のない機能だが、そんな機能をわざわざ搭載しているところがまさに男のロマンといった感じで好きだ。
僕は高校の授業中暇な時にこのボタンを押して時間を潰す。
今日も僕は3時間目の授業中にボタンを押した。するといつものようにダイヤルが回り出す。それをみていると急に頭が痛くなってきた。吐き気もする。耳鳴りもして、キーンと甲高い音が聞こえる。
視界が歪んで、そのまま意識を失った。
僕は自分の部屋のベッドで目覚めた。時計を見ると19時。僕は約9時間意識を失っていたことになる。
しかしおかしい。意識を失ったのは学校だった。
僕は一体どうやって家に帰ってきたのだろう。
そもそも気を失っていた9時間もの間は何をしていたのだろう。
夢遊病のような状態だったのか、それともなんらかの原因で9時間前からの記憶がすっぽり抜けてしまっているのか。
さまざまな想像をしたが答えはそのどれでもなかった。
答えは僕の勉強机の上にあった。ルーズリーフに長いメモ書きがしてあった。
「「
こんにちは。私は未来から来た。と言っても物理的ではないけどね。
その君がつけている時計を媒介して、未来から意識だけを君の体に転送した。
私の意識が君の体の中にいた間、君の意識も僕の体に転送されていた。
つまり私と君は時を超えて体を交換していたというわけだ。
交換している間、私の体は薬で眠らされていたいたから君は気を失っているような感覚だったと思う。
君が未来で私の体に入っていた間のことを覚えていないのは、私の体が睡眠薬で眠らされていたからだ。
君がパニックを起こしてしまう可能性も考えてしたことだ。
あとその時計に関してだけど、君が知らなくちゃいけないのは、右上のボタンがタイムトラベルのトリガーになってるってことだけだ。
そのボタンを押せば僕と意識が交換される。でも毎回じゃない。というか大抵の場合は交換は起きない。交換は起きるべき時に起きるとだけ言っておこう。
ここからが本題だ。
2月16日、君を含める東福山高校2年生125人が死ぬ。
修学旅行最終日に生徒を乗せた飛行機がテロリストに乗っ取られ、東京都の某高層ビルに衝突する。僕が知る限り9.11以来最悪の飛行機を使ったテロリズムだ。
僕の目的はこの事故を止めることだ。事故ついてよく知っている僕が君の体に入り事故を起こしたテロリストを止める。
そのために君にお願いしたいことがある。僕は君が時計のボタンを押してくれないとタイムトラベルできない。だから僕が以下に指定する時間にボタンを押してほしい。
・2月12日、君が沖縄行きの飛行機に乗ったタイミングで一回
・2月13日から15日、23時に一回ずつ
・2月16日、空港行きのバスに乗ったタイミングで一回
君の修学旅行を邪魔しないように最大限配慮するから安心してほしい。
あともう一つだけ。ノートPCを持っていくのを忘れないように。
では、よろしく。
」」
当然ながら僕はすぐにこれを信じられなかった。ただ何か怪奇なことが起きていることは事実だ。
ルーズリーフの端っこに、「あなたが未来から来たという証拠を見せてください」と書いてまた時計のボタンを押した。
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