第38話

私達に向かって数十本は飛んで来たクナイに思わず心の中で叫ぶ。




「桜っ‼咲っ‼」



「動いちゃダメです‼政宗様‼」



「でもっっ‼」



「楽勝ですっ‼」



「おいっ‼さく……」



「借りますね、こじゅ様‼」



「あ"!?って、のぁぁぁぁぁっ!?」





突然の織田信長、伊達政宗やらの出現。


飛ぶクナイ。



『きゃぁぁぁっ!?』とか『えぇえっ!?』などと騒がしくなる一方の周り。



でも私の心の中はソレに反比例するように冷静になっていく。




心が……体が……あの時代へと戻っていくーーーーー。




「くくっ。相も変わらず……」




"面白い"



織田信長公の口がそう言ってるのが見えた。




相も変わらず??


それはこっちの台詞です。



私は、こじゅ様の制服の上着の襟首を掴むと、ペイっとそれを脱がした。




そして巻き込まないように突き飛ばす。




「桜、テメェッ‼」



「お叱りは後で受けます‼」




本当に昔に戻ったみたい。



あの時代……、成実様と一緒によく無茶をした。


その度に小十郎様に叱られてたっけ。




懐かしくて微笑むも、クナイは容赦なく向かってくる。





「きゃぁぁぁっ‼」




誰かわからぬ人の悲鳴。




こじゅ様の上着を広げ、飛んで来たクナイを全て巻き取る。













…………予定だった。



けれど。




「政宗様‼」




一本、たった一本だけ、時間差で投げられたクナイ。



それは最初に投げられたあたし達を狙ったクナイのスピードとは違って速く、真っ直ぐ政宗様に向けられていた。



これが目的かっ‼



見えてはいる、見えてはいるんだけど、昔と比べるとやはり反応は遅くて。


身体能力の差に歯を食いしばるしかない。




政宗様はっ‼

美冬ちゃんは、傷付けさせない‼




私は、巻き取ったクナイを放り投げて、美冬ちゃんとクナイの間に立った。



こうなったら私を盾にっ‼





「桜っっ‼」



「桜っっ‼」




ああ……、二人ともそんな顔しないで、私は



大丈……大……大丈








大丈夫くないですね‼




やっべぇ‼



こんっっの織田信長ーーーーーーーーーーーーっ‼






あたしは覚悟して、目をつむった…………。

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