第20話

「……お前、誰だ?」




失敗した!!



ブワッと汗が吹き出る。



私にとっては"成実"様でも、この方は私を知らない。



初対面。



目を合わせて気付いた。


この方も前世の記憶を持たない。



わかってたのに…。



それでも完全拒絶の瞳が、鋭い声が痛かった。



苦しかった。




言い訳を……せねば。




グッと歯を食いしばった。




「あっあのっっ違うんですっっ!!パンっっ!!パンが大好きなんです!!私!!」



「へ?」




嘘ですー。

本当はおにぎりが大好物なんですー。



成実様に嘘をつくなんて!!




しかし、空気が若干和らいだ。




畳み掛けるなら今!!




私は差し出されたパンを一気に口に入れた。




そのままムシャムシャと咀嚼する。




あああああー。

せっかく頂いたパンを食べてしまいましたー。



永久保存しときたかった…。

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