『ヒョット・コー』

やましん(テンパー)

『ヒョット・コー』 上

 

 『これは、フィクションです。』



 ヒョット・コーは、北欧の出身とされるているのですが、残念ながら、そうした説話は見つかってはいないようです。


 フィンランドのレーヴィ・マデトヤさまの作曲した『オコン・フオコ』は『おかめとひょっとこ』ではないか? との話しもありますが、作者の持つCDの解説では、『オコン・フオコ』自体は、日本の人形師とされています。彼が作った人形『ウメガワ』が、なぜか命を授かり、『オコン・フオコ』を自決に追い込んで行くのです。怪談に近い、少なくとも、ユーモラスな話ではなさそうですね。


 ヒョット・コーは、自分の出自には興味がありません。


 自分自身が、人間から見たら、妖怪変化の類いであることは、間違いのないことでありますから。しかし、逆もまた真理なのです。妖怪がわからみたら、人間こそが、妖怪なわけなのですから。


 しかも、妖怪が邪悪なものだと断定するのは、人間の悪い習性です。


 大多数の妖怪は、人間とは住む世界の次元がほんのすこしばかりずれているとこに住んでいるために、まず、接触することはなく、妖怪たちは、まるで人間のようには戦争もせず、平和に暮らしていたのです。


 人間の中には、なにかの拍子で、踏み違えて妖怪がわの領域に入り込む人があります。また、逆もまたあるのです。


 それは、宮沢賢治さまの『ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記』を読むと分かるわけです。


 つまり、ヒョット・コーは、事故に因り、大幅に足を踏み外して、人間の世界に転落したのでありました。


 そうして、帰れなくなったのです。


 妖怪の中には、転落の衝撃で、過激になったり、なげやりになったりするものもあるのは確かですが、それは少数で、大概は、運命を受け入れて、助け合いながら、静かに生活しています。


 ヒョット・コーもそうですが、ひとりぼっちを好むため、仲間とはあまり交流しませんでした。


 人間の世界の地理的な区切りは、妖怪の世界には必ずしも当てはまりません。北欧から、この日本の山に一気に転落しても、あまりおかしくはないのです。


 そこに、世をはかなんだ、人類のヤンシマーが、たまたま、入り込んできたのです。












 

 


 


 


 

 

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