その聖女、腹痛につき
@joshua110yd
第1話 その聖女、腹痛につき
神様に祈りを捧げる時、人は一体どこで祈りを捧げるのか?
たとえば聖堂、たとえば教会、たとえば自室……あげるとキリがないが、信心深い人じゃなくても祈る場所が一箇所だけある。個人的には、祈りを捧げる場所ランキングトップ10に入るのではないかと踏んでいる。
それはどこだって? そう、それは──
「うっ……神様……おたすげっぐださいっ……!」
……腹痛で苦しんでいる時、トイレの中で、だ。
『なんだリディア、まーたお腹壊したのかー?』
「ううぅ……気をつけてたのに……」
ペチペチとツヤツヤの尻尾をリディアに叩きつけているのは黒猫のココナだ。枕元に立って心配そうにのぞいている。腹痛のピークは
これは今回は長いぞ、と覚悟を決めたリディアはグッと上半身を起こす。とりあえずもう一度飲もう、とベッドサイドのテーブルに置いていた、聖水入りのコップをくいと煽った。
「はあ、貴重なのに……。もうないしまた買うしかないかぁ」
『難儀な体質だよな〜リディアも。今回は何が原因なんだ〜?』
「た、多分パン……。旦那さんと喧嘩したってミエさん言ってたから。うう、まだ痛い」
『はーん。パン屋のおっちゃん、まーた美人にデレデレしたんだ。だからおばちゃん怒るのに〜学習しないなあ』
「今回、どうやら、勝手におまけ渡した見たいよ……」
『あ〜あ。そりゃ長引くなあ』
お腹をさすりながらパンを見る。これでは残りのパンも食べられないじゃないか。そう気づいたリディアは、はぁ、とため息をつく。ミエさんのところのパンはちゃんとしてる上に美味しいから重宝しているのに。
近所の子供達に渡すか。美味しいことに変わりはないし、私じゃないんだからお腹が痛くなることもないし……。そう考えたあと、バスケットにパンを詰め、ふわっと上から布を被せておく。明日の朝、渡しに行こう。……また勘違いが深まりそうだが仕方がない。やらない善よりやる偽善、と言いながら自身を納得させるリディアを見てココナはふぁあとあくびをしながら言った。
『全く、リディアも諦めが悪いよねえ。今更『カナルディアの聖女』の呼び名が消える訳ないのに』
「うるさいな〜もう。子供たちの様子も見たいし。どっちもできるんだからお得でしょ?」
『はいはい。誤解とけるよう頑張って〜』
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