生存記

rm

1日目

 喰われた。


 巨大な獣の牙が、私の首を貫いた時、初めて「痛み」を知った。


 肉が引き裂かれ、骨が砕ける感覚。口から熱い液体が溢れ出る。心臓が激しく脈打つ。それが次第に遠のいていく。

 

 世界が突然傾いた。宙を舞う体が地面に叩きつけられ、また放り投げられる。視界が揺れる。空と地面が目まぐるしく入れ替わる。まるで悪い夢のようだ。だが、これは紛れもない現実。


 獣の荒い息遣いが耳元で響く。熱い吐息が私の傷口を焼く。唸り声と共に、また新たな痛みが走る。肉の裂ける音が生々しく鼓膜を打つ。まだ生きている。まだ意識がある。すべてを克明に感じ取れる。


 激痛が走る。また走る。そして、また。痛みの波が途切れることなく押し寄せてくる。その合間に、私は考えていた。なぜ自分はここにいるのか。どこから来たのか。何のために生まれたのか。


 だが、答えを見つける前に、痛みさえも遠くなっていく。体が冷たくなっていくのを感じる。視界が徐々に暗くなり、音も遠ざかっていく。


 もう終わりなのだ。


 私は死ぬのだ、という確かな認識が芽生えた瞬間、全ては闇の中に溶けていった。

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