第25話 咲子さんの告白

ハンドメイドイベントの成功から少し時間が経ち、私たちはまたカフェで集まっていた。雪の季節はまだ続いていたが、日差しは少しだけ柔らかくなり、春の気配が少しずつ感じられるようになっていた。


この日はいつもと少し違う雰囲気だった。咲子さんが落ち着かなさそうにカップを握りしめ、時折何かを言いかけては口をつぐむ姿が印象的だった。


美香さんがその様子に気づき、「どうしたの?何かあった?」と優しく声をかけた。


咲子さんはしばらく迷っていたが、やがて意を決したように顔を上げた。「……実は、少し話したいことがあるの」と静かに言った。


彼女が口を開くと、その言葉はどこか重みを感じさせた。


「私……これまで、人前で話すのが怖くて、自分の気持ちを隠してきたことが多かった。でも、この間のイベントを通じて、自分の作ったものを見てもらえたことがすごく嬉しくて……もっと何かできるかもしれないって思ったの。」


彼女の声は少し震えていたが、それでも続ける意志が感じられた。


「それで、少しずつだけど、自分のことをもっと周りの人に伝えていけるようになりたいって思うの。まだ怖いけど、二人と一緒ならできる気がして……。」


彼女の言葉を聞いて、私は胸が熱くなった。咲子さんがこんな風に自分の思いを話してくれるのは初めてのことで、その一言一言が彼女の中でどれだけの勇気を必要としたのかが伝わってきた。


美香さんも、「咲子さん、それってすごいことだよ。自分の気持ちを伝えるのって、簡単なようで本当に難しいよね。でも、その一歩を踏み出そうとしてるのが本当にすごい」と、真剣な表情で言った。


私は「僕もそう思う。少しずつでいいんだよ。咲子さんが自分のペースでやっていけるように、僕たちはいつでもそばにいるから」と答えた。


咲子さんはほっとしたように小さく微笑み、「……ありがとう」と言った。


その後、私たちは自然と次の目標について話し合った。美香さんが「次のイベントも絶対参加しようよ!その時は、もっといろんな人に咲子さんの作品を見てもらえるようにしよう!」と言うと、咲子さんも「……それなら、もう少し新しいことにも挑戦してみたい」と意欲を見せた。


「いいね。新しいことを考えるのも楽しいよね」と私も賛成し、三人でこれからのアイデアを話し合った。


カフェを出る頃、咲子さんがふと立ち止まり、空を見上げた。


「今日は……話して良かった。二人がいると、少しずつ自分を変えられる気がする。」


その言葉は静かだったが、私たちにとっては何よりも力強いものだった。


美香さんが「これからも一緒に頑張ろうね!」と笑顔で言い、私も「そうだね。これからもずっと一緒に」と答えた。


冬の冷たい空気の中で、咲子さんが見せてくれた勇気。それは、私たち三人の間に新しい希望の光を灯してくれた。


この日、私たちはまた一歩新しい未来に向かって進むことができた。そして、その未来がどんな形であれ、私たちは共に歩んでいけると確信していた。

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