それぞれの障害、それぞれの居場所

星咲 紗和(ほしざき さわ)

第1話 出会い

薄曇りの日、いつも通っている就労サポートの施設に、新しいプログラムがあると聞いて参加することにした。そこで、彼女たち——場面緘黙症の咲子さんと、チック症の美香さん——と出会うことになる。


最初はお互いに目を合わせることも、声をかけることもできなかった。咲子さんは控えめで、初対面の人とは話せないようで、ただ小さくうなずくのみ。一方、美香さんは自分のチック症状が気になっているようで、他の人と距離を取っているように見えた。彼女のわずかな動作や音に、周りが少し驚く様子があったが、彼女はいつものことだというように何も気にしていなかった。


プログラムの中で、自己紹介をする時間が回ってきた。正直、話すのは気が重かったが、みんながそれぞれの障害や不安を抱えてここにいると知って、少し安心した。


「統合失調症とASDがあります」と話した時、咲子さんと美香さんがじっとこちらを見つめているのがわかった。咲子さんの目は優しく、温かいものを感じさせる。そして美香さんは、少しだけ笑ってくれた。その表情が、どうしようもない不安をほんの少し和らげてくれた。


それぞれに自分の障害について少し話し、お互いの言葉にうなずき合う。お互いを理解しようとする空気が、ほんのわずかだけど、そこには確かにあった。


その日の帰り際、誰とも話すことなく去ろうとしていた咲子さんに、何か言葉をかけたくなって、思い切って声をかけてみた。


「また会えたら、話せたら嬉しいです。」


彼女は驚いたように目を見開いた後、小さくうなずいてくれた。そのしぐさが、なんだか胸の奥に温かさを広げた。


こうして始まった、三人の静かな友情。それぞれの障害を抱えながらも、少しずつ理解し合い、共に支え合う日々が、ここから始まることになる。

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