第35話

霞さんは泣いていた。


釣られて私も、泣いてしまった。



「霞さん、最後にしますから」


「どないした?」


「どうしようもない我が儘を言ってもいいですか?」



気が付けば周りはもう暗くなっていた。


私はべったりと霞さんに抱きついて、片時も離れなかった。


だけど彼は其れを咎めない。


お互いに、解っていたのだ。




「……最後の我が儘か。そっか、そやな」





もう二人でいる時間なんて余りないと、受け入れたのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る