第20話

離された手や消えてしまった彼の体温に寂しさは募るけれどそれよりもきになることがある。




"堪忍してな"




そう小さな声を絞り出した彼はあまり嬉しそうに見えない。それは、私の思い込みではない。



だって、どれだけ長い時間を彼と共有したと思ってるのだろう。貴方の表情をいつも近くで見て来たのだから、喜怒哀楽くらいは読み取れる。






「…その結婚、私には言わないおつもりでしたか?」




深呼吸をして、また彼に問いかけた。



どうやら私は少し、落ち着かなければならない。取り乱したって良いことはないと知って居る。彼を責めるためにここに来たわけじゃないのだから、落ち着いて話をしなければ彼を困らせてしまうだけだもの。

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