第3話
起き抜けでまだ思考回路は覚醒していない。だけど、自分の家とは違うベッドシーツや家具が視界に入っても驚きはしない。
心の家にあるベッドはシーツもフレームも白で統一してるけど、今自分が寝転んでいるのは対照的な暗い木目調のベッドフレームと黒いシーツの上で。
もっと寝ていたくて顔を埋めた枕から香る甘い香りはこの家の主と同じ物。
「もう昼過ぎてんの、いい加減起きて帰れば?」
「………」
「二度寝すんなよ。お前どんどん図々しくなるね」
纏う香りは甘い癖に。
「皆がみんなお前に優しくしてくれると思うなよ」
「わっ、」
強い力で枕を抜き取ったこの男は全然甘くない。心がどんどん図々しくなってるとしたら、この男はどんどん厳しくなってきてる。
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