第13話

「まだ椿ちゃんに怯えてんの?」




「…もう帰ってよ。用事なんて無いんでしょう」






あくまで、冷静に。




声を荒げないように、感情的にならないように。抑えきれない気持ちは拳を握る事でどうにか我慢して。





この男と話す時はそれを心掛ける。私が感情的になって取り乱す姿を見せれば、この男の思惑通りだ。





「僕が帰ってまた勉強するの?そんなに頑張っても椿ちゃんに敵わないのに?そろそろやめたら」




「アンタに関係ないでしょう。どれだけ私の事が嫌いなのか知らないけど、そんなに嫌なら無視すればいい!構わないでよ!」




思惑通りになんてなりたくないのに。嫌になるくらい、この男はーーー





「アンタじゃないよ。ちゃんと千織って呼んで」





どこまでも私の胸を抉る言葉を知っている。

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