第7話 空

空は、小さい頃から明るくて誰にでも話し掛けて…仲良くなれる性格だった。

だから、友達は多い。

女子とも仲良くできていると思う。

母さんは、妹2人よりも俺が可愛いいらしく…俺の心配ばかりしてくる。



中学校になって…

特に好きな人もいなかった。

クラブや、友達と遊ぶことが楽しくて…



そんな中で、いつも話し掛けてくる栞がいた。

栞とは、話しやすくて…

一緒にいても、気兼ねなく過ごせる。



そんな、栞が俺に告白してきた。

俺は…どうしよかなって思ったけど…

特に断る理由もなかったし…

栞ならいいかなって思って、付き合ってもいいと返事をした。



それから、学校でもすぐ噂が広まって…

みんなの公認となった。



その後、親の都合で急に引っ越すことになった。

でも、中3だし…転校するのは可哀想だと…

今の学校に、そのまま通うことになった。



栞とも、喧嘩もすることなく仲良くやってる。



夏休みも、栞とはたまに遊びに行っていた。



ある日、家の近くの道路を渡りたくて…

横断歩道まで距離があったけど、渋滞してたからいいかって思って

横断歩道のないところを渡ったら…反対車線から来た車にはねられた。

でも、すぐ立ち上がれたし…大したことないから

大丈夫です。って言ったんだけど…

一応、病院に行ってって言われて

近くの病院に行った。

事故のケガは大したことなかったみたいだけど…

レントゲンを撮ったら、気になる影が膝にあると言われた。

ここでは、詳しい検査は出来ないからって

大きな病院への紹介状を貰った…



栞に報告したら、すごい心配してる…



母さんに病院に連れて行って貰って

色々、検査されて…



先生の話を聞いた…



先生は、病名を…骨肉腫だと言った…

骨に出来る癌らしい。



―――何だ、それ?



「すぐ入院して、抗がん剤治療をしないといけません。抗がん剤で癌が小さくなれば癌を取り除くだけで済みます。小さくならなければ、最悪は切断することになることもあります」



俺は、頭がパニックになった…



それから、すぐ入院した。



少しして抗がん剤の治療が始まったけど…

気分が悪くなって、何度も吐いてしまう。

ずっと気分が悪くて、何も食べられない…

これを数回しなければならないらしい。

入院は1年くらいになるかもしれないとも言われた。



髪の毛も抜けてきた。

母さんは、元理容師だったから…

中途半端に髪の毛が残るのも嫌だったし、剃って貰った。

母さんは、俺にずっとついていてくれた。



栞は、毎日メールをくれるけど…

調子が悪いと、メールすることも出来ない…

こんな状態を見られたくなかったから面会も出来ないって言った。



合間に、叔母が来てくれた。



俺は、覚えてなかったけど…

後で聞いた話によると…



「こんな風に苦しい治療も、後になったら良かったって思える日が来るんかな…?」



って言ったらしい。



叔母は、なんて答えたらいいか分からなかったって言ってた。



抗がん剤の治療が終わって、

幸い、がんが小さくなったから手術をして癌を取り除いた。

そして、その時に関節を繋げるための金具も入れた。



入院中に、小児病棟の他の子どもとも仲良くなった。

その中には、白血病の子や脳腫瘍の子…

俺より、重い病気の子が沢山いる。

俺の入院中に亡くなった子もいた。



それを聞くと…

俺も、死ぬのかもしれないという恐怖が大きくなった…


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る