第6話 空の病気

空は、家の事情で5月の連休中に隣町へ引っ越したと栞から聞いた。



空の家は、団地の上にあるらしく…駅も遠いから

お母さんが、近くの駅まで送り迎えしてるらしい。



相変わらず、学校では仲よくしてる2人…

羨ましがる友達もいる。



「いいよね。あの2人…お似合いだね。舞もそう思うでしょ?」


「そうだね。仲も良いし、お似合いだよ…」



本当は、心の中がチクチクしている。

それを隠すのも大変だ…

どんなに日数が経っても、舞の気持ちはぐちゃぐちゃだった。



そんな気持ちを抱えたまま…夏休みを迎えた。



あの2人に会わなくてもいいのは、助かる。

でも、栞はお構いなしに…空の話をしてくる…

目にしないよりは、マシだった。



夏休みも終わる頃…

栞からメールが来た。



―――空くんが事故に合って…それで病院に行って検査したら、大きな病院にって言われたみたい。



―――えっ!そうなの?それで、どうなったのかな?



―――それからは、まだ返事が来てないんだよ…



―――そうか。心配だね…分かったら教えて。





それから、数日して…栞から電話があって…

空くんが入院したと聞いた。

長い入院になりそうだと…電話で栞は泣いていた。





杉山さんの言うことは本当だったんだ…

本当に、重い病気なのかな…



夏休みが終わって、学校に行ったら

先生から、空くんに病気が見つかって入院することになったと説明があった。



栞の話だと、入院は長くなる。

もしかしたら、1年くらい掛かるかもしれないと…



栞は、病院にお見舞いに行きたいけど…

お母さんがいるから、難しいって言ってた。

クラスのみんなも、お見舞いに行きたいと先生に言ったけど…

今は見舞いは行けないと言われた。



栞は、毎日…空くんにメールをした。

調子がいいと、空くんからもメールがいっぱい来るって…嬉しそうに話す。



数か月して、空くんは院内学級で勉強することになったと聞いた。



私達も、受験だ…



空くんのことも心配だったけど…

杉山さんの言う通りだとすれば、私の初恋が実らなかったことで

空くんは助かるはず…

そう信じるしかない。



舞は、隣の高校に受験すると決めた。



栞は、違う高校を選んだ。





月日は流れ…

舞は、隣の高校に合格した。



空くんは、院内学級で勉強をして、エレベーターのある高校に

病院から受験して、合格したと…

栞も、その高校を受験して合格した。

空くんは、高校入学前には退院できることになったと、栞から聞いた。



空くんは、卒業式にも来られなかった。



だから、舞も栞も空とは会えないまま、卒業した。



栞は、空くんが退院してから少しして空くんに会えたとメールをくれた。



2人は離ればなれになって、メールしかやり取りが出来なくても

続けることが出来たんだな…

すごいなって思った。

2人なら、もう大丈夫…



空くんが、助かって本当に良かった…



今思えば、杉山さんのことは私の夢で…

本当は、空くんは助かる運命だったのかもしれない…

そして、私の初恋も最初から実らないと決まっていたのかも?

そうだったとしても、おかしくなかった…



あれは、夢だったのかもな…



栞とも、高校が離れたし…

空くんとも会えない状態になった。



これで、スッキリ空くんのことは諦められる。

これで、良かったんだ…



新たな気持ちで、高校に行こう…

そして、いつか空くんの事を忘れて、新しい恋が出来ればいいな…


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