プロローグ・B
旅行鞄の口を閉じたところで、テーブルに出していたとある儀式に関する資料が魔術師の視界に入る。
どれも内容は頭に入っているが、彼はなんとはなしに一冊、観光案内の冊子を手に取った。賑やかな絵の描かれた表紙をめくり、ぱらぱらと中を見る。
そこへ、朝食の片づけを終えたらしい魔術人形がたどたどしい足取りで近づいてくる。この魔術師には珍しいローブの装いと大きな荷物をじいっと見つめ、それから機械的な口を開いた。
「ご主人サマ、旅行? いつ、帰る?」
「仕事だ。長期の予定だが、しばらくは週に何度か戻る」
「祝祭が、あるから?」
魔術師がぞんざいに頷けば、人形は無機質な顔面に面白がるような雰囲気を醸した。
なんとも器用な芸当は、単に
「一年がかりの魔術を扱うことになる。季節ごとに要素を送るから、お前はここで
「報酬……」
「ったく。季節の妖精を狩れたら同封しておく。それから、外出は好きにして構わんが、他人を家に入れるなよ」
「わかっタ!」
無表情のまま嬉しそうにひょこひょこ跳ねる魔術人形にため息を落とし、魔術師は玄関へ向かった。
――目を通しておけ。
留守を預かる魔術人形へ宛てられたテーブルの資料には、魔術師の記した覚え書きが添えられている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます