恋するイチロー

僕イチロー10歳。


イチローっていう名前は野球が大好きなお父さんが付けてくれた。

みんな気軽に僕の事イチローとかいっちゃんって呼んでくれるから割と気に入ってる。


いい名前だよね。


お父さんは公務員。ちょっと太ってる。

お母さんは専業主婦。すごく優しい。

お兄ちゃんは高校生。よくおやつくれる。

お姉ちゃんは中学生。よく遊んでくれる。


僕、好きな人がいるんだ。


毎朝うちの前を通る女子高生のリオちゃんだ。


「リオおはよ~」

「おはよー」


あ、リオちゃんだ。

今日もかわいい。


目が大きくて髪の毛はサラサラでなんかいいニオイがしていつもニコニコ笑ってる。


リオちゃんの事好きだって事はお父さんにもお母さんにもお兄ちゃんにもお姉ちゃんにも言えない。


恥ずかしくて言えないよ。


僕は学校に行ってない。行けないんだ。


だから毎朝かわいいリオちゃんを見られるんだ。


あ、リオちゃんがこっち見た!

あ、手振ってくれた!

僕を見て笑ってくれた!

あーリオちゃんかわいいなー大好き!


嬉しい!嬉しい!ちょー嬉しい!!


「あらイチローどうしたの?ずいぶん嬉しそうね」


嬉しいよお母さん!

だってリオちゃんが手振ってくれたんだよ!


リオちゃんに好きだって伝える事はできる。

会いにだって行ける。

ずっと見てるよ。会いたかったって伝えたい。


でもね、僕のこの恋は絶対に実らないんだ。




だって僕、



「イチロー!お散歩いくよ~!」


「ワン!」


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