幸福論
まりも
餃子
「あー餃子食いてえな」
「うっそマジあたしも」
翌日。
野菜を刻み肉と混ぜタネをこねくりまわす女。
慣れた手つきでタネを皮に載せ丁寧に包んでいく。
次々と並べられる餃子。
「完っ璧」
出来上がった大量の餃子を見て満足気な表情の女。
ガチャッ
勢い良く玄関のドアが開く。
「今日は餃子だっつーから早く帰ってきたぜ!」
「おかえりー」
笑顔で出迎える女。
出来上がった餃子をテーブルに並べる女。
みるみる青ざめていく男の顔。
「…おい」
低く小さな声を出した男はエプロン姿の女の腕を掴んだ。
「…なんだよコレ」
「見てわかんないの?餃子よ、ギョ・ウ・ザ」
「餃子…」
「餃子食べたいって言ってたじゃーん」
「焼けよ…」
「え?なんて?」
「なんで揚がってんだよ!」
「餃子っつったら揚げ餃子でしょ!」
「ハァ!?バカかテメー!揚げてんじゃねーよ!焼けよ!焼け!餃子っつったら焼き餃子だろーが!」
「なんですってぇー!?」
「餃子も焼けねーのかこのバカ女!」
「揚げ餃子の美味しさがわからないなんて情けない男!」
「あーもう無理。別れようぜ」
「そうね。揚げ餃子の素晴らしさがわからない男なんてもうなんの魅力もないわ」
「おい。餃子に謝れ」
「はいー?」
「揚げてしまって申し訳ございませんって土下座しろ」
「ふざけんなバーカ」
「お前は本当にバカな女だ」
エプロンを脱ぎ捨て、自らが作った揚げ餃子を怒りに任せながら頬張る女。
「でも一番好きなのは水餃子だけどねー!モグモグモグ。あーおいし」
「す、水…!!」
男は思い切り目を見開き女を見た。
「何よ!どうせまた水餃子なんてとか言うんでしょ!?はい別れます別れますよ!はいはいサヨウナラ。でもこの揚げ餃子食べてからね」
女が揚げ餃子を口に入れた所で男が女の肩をグッと掴んだ。
「ちょっと何よ!痛いじゃない!モグモグモグモグ」
「結婚しよう」
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