第11話 王都脱出、初めての馬車の旅
俺たちがギルドの外へ出ると、
エメルダがドアノブに、鎖を巻き南京錠を掛けた。
その上から、木の板に閉鎖と書かれたプレートを掛けた。
おお~文字が読めるし、頭の中で文字が浮かんでくる。って事は、
書ける?って事だよな、神様スゲ~!
「タカシ様、準備出来ましたので出発しましょう」
俺たちは、門番との交渉の段取りを話し合い、
口裏合わせをしながら、市壁門へと向かった。
段取りは俺がどこぞの商人の息子で、マリーは従者、
エメルダは俺に雇われたギルドの職員で、西の森に出没する、
ゴブリンを討伐する為の技術指導者兼応援者だ、
ゴブリンの数は5匹、これは実際にギルドから出ている討伐以来で、
焦げ付いているんだそうだ。
ギルドが閉鎖するので、報奨金は依頼主に返さなければならないのだが、
依頼主は既に死亡しており、焦げ付いたらしい。
つい先日の事なのだそうだ。
先ずは、エメルダが賄賂なしで、外に出る交渉をする。
本来は討伐依頼を受けた冒険者を、門番ごときの、
下級兵が引き止める事など出来ないそうだが、
王国が冒険者を兵隊にする為に、捉えているのだそうだ。
無理やりにだな、
俺は15歳で、なり立ての冒険者なので、
門番も捉えたりはしないんだと、
まあ、戦場に出ても役には立たんわな、
交渉が上手く行かない様なら、俺とマリーがビールが入ったタライを、
持って陣中見舞いに行くって手はずだ。
市壁門に着くと、早速エメルダが張り切って、門番の所へ向かった。
その様子を見て、
「うん、これはもう、ダメっぽいね、」
人目が無い事を確認して、ストレージからタライを出した。
二人には理解し易い様に、インベントリ(無限収納庫)
と言っているが、
インベントリ(無限収納庫)は中に時間の流れがあるらしい、
俺の場合、無限収納庫なのだが、中に時間の流れが無いのである、
リリーの話では、ストレージと言うのだそうだ。
難しい話は、俺の脳みそでは、良く分からないのだが、
インベントリ(無限収納庫)とは全く違う概念らしい、
この世界でストレージを持つのは、俺だけと言うユニークスキルなのだそうだ。
「マリー門番の所へ行くよ」
「はい、タカシ様」
マリーも分かっている様だ。
俺とマリーは涙目になって交渉しているエメルダを、
後ろに下がらせると、タライを門番のリーダーの前に置いて、
俺は目をキラキラさせて、
「騎士様、私たちはこれから、西の森に出没する、
ゴブリンを討伐しにまいります。ゴブリンの数は今は5匹だそうですけれど、
村娘が幾人か攫われておりますのでひと月もすれば、
村が襲われる事になるでしょう、そうなれば、軍隊の為の
食料が奪われることになります。騎士様、どうか私達をお通し下さい。
私はまだ弱くて、ギルドに応援を頼まないと戦えませんが、
モンスターを倒し、強くなりいずれ、騎士様の様に、
国を守る騎士になりたいのです。
このタライは陣中見舞いです。父からくすねて来た、
なんでも、外国のエールと言うお酒らしいのですが・・・
騎士様のお口に合えば良いのですけれど」
「お前、名前は?」
「はい、ヤマダタカシと申します」
「そうか、確かに陣中見舞い受け取った。
俺の方が口を合わせるから心配するな、お前たち通って良いぞ、
王国の為に励め!」
「はい、 騎士様、王国の為戦って参ります」
「タカシ、死ぬんじゃないぞ」
俺はキラキラした目のまま門番のリーダーに
プルトップの開け方の説明をして、門を抜けた。
門の方から、
「なんじゃ~こりゃ~、めちゃくちゃうめえ~!!」
という声が聞こえて来た。
エメルダは肩を落として、下を向いて歩いている。俺の笑顔を見てマリーは、
「タカシ様・・・とっても悪い笑顔ですね」
まあ、嘘八百だからね~、
俺たちは、門の外に幾つかある馬車隊の中から、
ジオンの街へ行く商隊を見つけて連れていって貰う事になった。
一泊二日の旅だ、俺たちはホロ付きの馬車で、
一人銀貨二枚だ平時の2倍なのだそうだ。
ホロ無しの場合は少し安い様だ。
出発は昼から、それまでに客が一杯になつたら出発するのだと、
馬車隊は全部で10台、客車は4台だ、道中盗賊や、モンスターも、
出る事が有るので、用心棒が5人、馬車隊の護衛に当たっている。
幌馬車に乗り込むと、御者が話しかけて来た。
「最近は物騒でね、食い詰めた農夫なんかも、
盗賊に身を落とすんですよ、
その為に馬車隊を襲うこともしばしばでしてね、
護衛は5人いるんですが、盗賊が多いと手が回らなくてね、
お客さん、冒険者の様だから手が回らなくなったら、
協力してもらえませんかね」
「あっ、良いっスよ~盗賊が近くにいたら危機感知が働くので、おしえますよ」
「えっ、軽い返事だけど、本当ですか?そうしてもらえれば、助かります。
上手くいけば、盗賊と鉢合わせせずに済みますよ~」
俺はマップ上の、敵を索敵すると御者に、
「地図があれば、盗賊が罠を張っている場所を危機感知で調べますよ」
「えっ、そうなんですか!ちょっと待っててください、
リーダーから地図を借りて来ますんで、」
そう言うと、御者は馬車を降り小走りで、先頭の方へと行った。
少しすると、御者が商人風の男と一緒にやって来た。
「これはこれは、冒険者様、
私はこの商隊のリーダーをやっておりますバンジョと申します。
地図を見ると、盗賊が罠を張っている場所がお分かりになると、
聞き及んだのですが、誠でございますか?」
「これはご丁寧に、俺はヤマダタカシ、今回は、ギルド職員さんも、
同行しているので、信頼していただいて、良いかと思います。
俺には危機感知能力がありまして、
地図を見ても発動するのですよ、人にはないしょの能力なのですが、
今回は自分たちの命も掛かっているので、特別と言う事で、
他言無用でお願いいたします」
「はい、承知致しました。私どもは商人、口は堅いので、
ご安心ください」
リーダーに地図を見せてもらい、マップと照らし合わせて、
街道沿いに3ヵ所盗賊が罠を張っている場所を指示した。
「3ヵ所ですか・・・・今回は多いですね、この3ヵ所を迂回するとなると、
この道を使ってこの村を抜ければ、うん、行けそうですね、
ヤマダ様、申し訳ないのですがお仲間と一緒に、
私の馬車の方へ移ってもらっても、宜しいでしょうか?」
俺たちは、バンジョさんの乗る先頭の馬車へ移った。
乗客は俺たちだけ、バンジョさんの他は用心棒が5人乗りこんでいる。
ん~乗客の為の用心棒では無いのだろう、
バンジョさんと、積み荷を守るための用心棒と言った所か、
「こんな、むさ苦しい馬車に乗っていただいて、申し訳ございません」
「ああ、別に構わないですよ、盗賊と言っても人間、
岩や木の様にじっとして居る訳では無いですからね、」
「ヤマダ様にはお分かりでしたか、その通りでございます。
それにいざという時に、先手が打てると言うのは、非常に大きい、
と言う事でございます。出来たら、人死には出したくはございませんので」
この世界、隣りの街に行くのが命がけかよ!ありえね~
乗客が集まったとの事で、昼前に出発した。
馬車は流れる様に走り・・・ん?流れてね~、
おっそ~ 映画で見た幌馬車隊をイメージしていたのだが・・・・
乗ってみると、徒歩よりは早く、自転車より遅い、
車輪にクッションが付いていないので、直にケツに来る震動だ。
オマケニに道も悪い、ケツ痛て~酔いそう~
幌で景色も後ろの開口部から見える、地道だけ、いや~参ったね、
そんな、一泊二日の幌馬車の旅が始まった。
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