第41話

数ヶ月後。


香織は仁先生と小さな結婚式を挙げた。


純白のウェディングドレス姿の香織はすごく綺麗ですごくすごく幸せそうだった。


実はこの数ヶ月の間、「結婚するんだー♡あは」とか「プロポーズされちゃった♡きゃは」とか私の周りで謎の結婚フィーバーが巻き起こっていた。

年齢的な事を考えれば謎でもなんでもないんだけど。


おかげで私の【ゴリラにプロポーズされたい病】がすっかり悪化してしまったのよ。


香織に却下されて出番のなかったスケベナースのコスプレ衣装を着たらもしかしたらゴリラにプロポーズされちゃうかも!なーんて期待して「注射しちゃうぞ♡」って誘ってみたけど、大興奮したゴリラにハチャメチャに抱かれただけだった。


ゼクシィのCMが流れるたびにゴリラを見つめるのだけど、「そうか」と言ってキスはしてくれるけどプロポーズはしてくれない。


セクシー女優ばりに裸エプロンでキッチンに立っても、とんでもない下着を装着しても、どんなに激しいプレイをしても、大喜びでウホウホ言いながら悶絶するクセにプロポーズはしてくれない。



ゴリラはプロポーズというものを知らないのかもしれない。ゴリラだから。


ゴリラは結婚という概念がないのかもしれない。ゴリラだから。


あ!もしかしたらもう結婚してるつもりなのかも。

けっこう長い事一緒にいるし。


あ!もしかしたらバリバリ働く私を思っての事実婚なのかもしれないわねフランスみたいに!


私たちもう結婚してるんだわ、きっと。

そういう事にしておきましょう、うん。


私とゴリラの愛は永久に不滅よ。


もしかしたら明日とかにいきなりプロポーズするつもりかもしれないし…


ゴリラは絶対に私をお嫁さんにしてくれるはず…


きっとそうよ…


みんなもそう思うでしょう…?



「山田」


「はい」


「ケッコンだ」


「えっ!?」


「血痕だ。こんな所に」


「……」



絶対わざとよ。確信犯よ。わかってて言ってるわよね、このゴリラ。




私とゴリラがそんな事をしているうちに。



玉木宏似の男は結婚して仕事の都合でアメリカに行ったとか。


その玉木宏似の男と私の体当たりの演技で見事に撃退したあのストーカー男・森が、別の女性へのストーカー行為で捕まったとかなんとか。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る