第34話

なんだか面倒な事になりそうな気がしたので、とりあえず少しだけお茶に付き合ってあげる事にした。



「美奈子は?アイスコーヒー?」


なによ…私がアイスコーヒー好きな事まだ覚えてたのね。



「で?最近どうなの?あのゴツくてバナナが好きそうな男とはうまくいってんの?」


「なんで知ってるの!?てかはっきりゴリラって言いなさいよっ!」


「あははっ」



私とゴリラが一緒にいる所を何度か目撃したらしい。



「そのバナナが好きそうな男と結婚するの?」


「だからゴリラって言いなさいよ」


「実は俺、しちゃうんだよねぇ~結婚」


「うっそ!?嘘でしょ??」


玉木宏似のこの男も結婚だなんて…


「あれ?俺が結婚しちゃうのそんなにショック?」


「いえ全然」


違う違う、そうじゃない。そうじゃないのよ。


香織に続き玉木宏似の男までも結婚って…。

私も結婚…ゴリラと結婚…するのかな…したいなー…。


とりあえずこの動揺を誤魔化そうと煙草に火を点ける。


すると玉木宏似の男も煙草をくわえた。


「なあ美奈子」


「なに?」


「美奈子が今付き合ってるのって、ゴツつくてバナナが好きそうな男だよな?」


「だからゴリラって言いなさいよ!ってかどこ見て喋ってんのよ!?」


玉木宏似の男の視線は明らかに私を通り越した先を見ていた。


「…後ろ見んなよ?」


「は?なんで?」


「さっきから美奈子の事ずーっと見てる男がいるんだよ」


「そりゃいるでしょ!この美貌とこのスタイルですもの」


「いやそうじゃなくて」


「あらヤダ失礼ねえ」


「明らかにヤバいのがいる」


「…え?」


さっきマウストゥーマウスとか言ってた玉木宏似の男とはまるで別人みたいな真面目な顔と声のトーンに、これは本気と書いてマジなんだという事がわかる。


「ちょっと店変えよう」


「あ、うん」


玉木宏似の男に手を引かれ店を出る。


「ねぇ、どんなヤツ?」


「若くて小さいヤツ。ジャ○ーズ系」


「……」


若くて小さいジャ○ーズ系…?


「……あっ!!」


忘れていた記憶が蘇り、思い出した瞬間ゾッとした。


ストーカー男・森だ!!


「知ってる男?」


「知ってる…かも…」


すっかり忘れていたストーカー男・森。まさかまだストーカーとして生きていたなんて。

え、待ってちょっと待って。でもアイツ、ゴリラのストーカーだったんじゃないの!?


玉木宏似の男の手を思わずギュッと握ってしまった。


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