僕のはなしとあの子へ
@kakumomota
第1話
僕は2007年9月27日に産まれたマルチーズ。ママンのサイズの割に大きめの男の子で、丈夫な体と太めの尻尾を持っていた。家の人たちは僕の顔を見て鶴瓶師匠だ!とよく笑っていたが、かわいい!という意味だったと思っている。
僕の話の前に、少しママンの話もしたい。ママンは僕が産まれる6年前、4人兄弟の中で一番小さな体で産まれた。ママンはマルチーズ専門のブリーダーの家にて、一応販売用に産まれたけれど、小さいから売れないだろうと思われ、ブリーダーが引き取るつもりだったらしい。ところがある日、突然やってきた5歳の人間が、ゲージとベッドの隙間に挟まるのが趣味だったママンを気に入り、兄弟で一番最初に売れた。
ママンは5歳の人間を幼稚園のバス停まで迎えに行ったり、一緒に公園に出かけたり、大切なおもちゃに歯形をつけて泣かせてみたり、いろいろやってみた。5歳の人間には兄弟がいなかったから、ママンのことを妹のように扱い、本気で叩いてきて嫌な思いもした。でもおやつをくれるから仕方なく許した。ママンはまんまるに成長した。
ママンの家の人たちは、ママンの子どもを欲しいと思うようになった。初めての子どもは双子だった。ママンは一生懸命お母さんになろうとして、なんとか産まれたけれど、双子の体は小かった。チビとたまと名付けられた僕のお姉ちゃんとお兄ちゃんは、ちょっとだけミルクを飲んで死んだ。
それから4年後、2007年9月27日に僕が産まれた。僕はモモ太という古風な名前を付けられ少し不服だったが、待望の子どもだったから、ママンにも家の人たちにも大切に育てられ、すくすく育った。
ただ、僕は人間界でいうところの自閉症だった。
僕のはなしとあの子へ @kakumomota
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