#19 アリエの日記 12月10日2138年
私達はキャンプをしていた。その日は霧がかっていてすぐに寒くなった。
私達は早めのキャンプをすることにして、火を焚いた。炎の光が霧に拡散して、きれいだった。
「今日も、何の成果も得られなかったね」私はそう言った。
「ああ……」おじさんはそれ以上、何も言わず、ただ火を見つめていた。
食事に入る。
「ねえ、おじさんの奥さん殺した犯人って、何かわかっていること、また話してもらってもいい?」私は聞いた。
「ああ。巨躯の男で、声はしゃがれていた。なんだか、いびつなシルエットをしていて、左半身が発達しているように見えた……。おそらく変異によるものだろう」
「……。そんな体の人いたらいやでも目立つよね! もしかしたらもう捕まっちゃってるのかも!」
「……もしくはとっくに逃亡して遠くにいるかだな」おじさんは目を伏せて、微かに笑った。それは諦めの表情だった。
私は思わず声を出す。「おじさん! ……エリーさんのお墓参りとか、して無いんでしょ? 一回戻ってみるのもアリかもしれないよ! 中央街なら何か手掛かりも見つかるかもしれないし!」
おじさんは優し気な目をこちらに向ける。
「そうだな……。情報収集がてら、エリーの墓参りでもするかな……」
「そうしようよ! きっと、奥さんも喜ぶよ!」私がそう言うと、目を閉じて、長いため息をついた。
おじさんはぽつりとつぶやいた。エリーの仇もまだ討っていないのにどんな顔で会ったらいいか、分からないな……、と。
私は、おじさんを支える相棒だ。だけれど、こんな時、どんな言葉をかけたらいいかは分からなかった。
それに、復讐を終えたら、エリーさんのお墓の前で死ぬって言ってたっけ。そんなの寂しすぎる。
こんなことを言うのは相棒失格なのかもしれないって、そう思う。だけれど、思わず口に出して言ってしまった。
「ねえ、おじさん……。おじさんは、もう、その……復讐なんてしなくてもいいんだと思う」
おじさんは何も言わなかった。
「おじさん、よく笑うようになったでしょ。ねえ、気づいてる? そんな風に笑える人が、復讐なんて、ムリ! でしょ? だから帰ろう? 帰って、一緒に住もうよ! その方が絶対いいって!」
しばしの沈黙。
「そうなのかも、しれないな……」
おじさんは眉間にしわを寄せて、なにやら考えてるようだった。
「……こうしよう。中央街に戻っても、何の手掛かりも得られなかったら、この旅はそれで終いだ。これでどうだ?」
「うん! 私もおじさんの家、住みたい!」
「俺の家はもうないぞ……。家賃なんか払ってないからな」
「え……? じゃあ、帰ったらどうするの?」
「何とでもなるさ。これまで二人でそうしてきたようにな」
「ふふ。そうだね……」
今日の出来事はこれでお終い。そのあとは、地図とコンパスを使って、中央街への道を確認したりして、寝ることにした。
明日から、私たちは帰路に就く。これで本当に良かったんだと思う。
明日も早いから、もう寝ることにする。
いざ、中央街!
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