#1 アリエの日記 11月12日2138年

私はあの時、もう死んだかと思った。

村が襲われて、みんな死んじゃって、目の前にはあの細長くて黒い化け物がいて、私はもうここで死ぬんだって思った。

化け物の口がビリビリ割けて、私に向かってきた。私は目を閉じて母さんを呼んだのを覚えてる。

その時だった。銃の乾いた音が聞こえたのは。

目を開けると、そこにいたのは、デイルおじさんだった。

私の手首くらいある銃口からは煙が出ていた。おじさんの目が赤く光っていたのが印象に残っている。

化け物は崩れ落ちた。


私はぽかんとしていて、自分が助けられたことに気が付いたのは少し後になってからだった。私はおじさんにお礼を言った。

おじさんは、私には目を合わせようともせずに、さっさと歩いて行ってしまうから、後をついていった。

迷惑そうな顔でおじさんは「付いてくるな」って言った。私は構わず、おじさんの後に引っ付いた。

諦めたのか、おじさんはかろうじて屋根のある瓦礫の中に座って、火を焚き始めた。私も隣に座った。


体があったまってくると、なんだか涙がこぼれてきた。

母さんや、父さんは、私のことをかばってくれた。そして死んだ。

私はみんなとの生活や笑顔を思い出して、泣いていた。

デイルおじさんは私に温めた缶詰をくれた。



あの日、デイルおじさんに出会った日のことは今でも忘れない。

家族がいた時に、よく日記を書いていたのを思い出して、また書いて見ようと思った。

日記帳はおじさんにねだった。「日記って、家族との思い出を書くの。おじさんはもう、私の家族だから」

私がそう言うと、おじさんは煙たいような顔をしたけれど、なんだかんだで日記帳を買ってくれた。

小さくて、分厚い日記帳。私はこの日記帳を思い出でいっぱいにしたい。

楽しいことも、悲しいことも、全部書き留めて、私の生きている証を残したい。

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