第1章8話:森

ラミアリスはしみじみとつぶやいた。


「この刻印こくいんは呪いみたいなものね。どこにいったって、あたしたちを縛り付ける」


階級印は、この国だけじゃない。


世界の全ての人間に与えられるものだ。


だから逃げられない。


国内の迫害に耐えかねて、国を出ても、大陸を脱出しても。


どこにいったって迫害対象はくがいたいしょうなのである。


絶対的な絶望であり、ルーカーに認定された時点で自死を選ぶ者も少なくない。


「でもあたしは、そんなの認めない。これからの人生ずっと負け組なんて、絶対に認めないわ」


「ああ、そうだな。俺たちには勝利する権利がある。ここから逆転すればいいだけのことだ」


お互い、意思を口にする。


ラミアリスが告げた。


「……で? 水と食料を確保して、盗賊を倒せばいいのね?」


「ああ」


「時間が惜しいわ。さっそく行きましょう」


「そうだな」


俺はうなずいた。


俺たちは川原かわらをあとにして、森へと足を踏み入れた。






森。


この森はシフォンド山の一部。


【シフォンド森林しんりん】と呼ばれている。


鬱蒼うっそうとして立ち並ぶ樹木じゅもくたち。


周囲には葉や草やしげみが密集したり、灰色の岩が横たわっている。


曇天どんてんが立ち込める空から陽射ひざしは届かず、森の中には陰鬱いんうつとした雰囲気がただよっている。


「まずは盗賊を探す」


と俺は目標を定めた。


ラミアリスが尋ねる。


「そうはいっても、結構広い森じゃない? どこにいるかわからないでしょ」


「たしかに居場所はわからない。ただ……連中が必ず通る場所がある。そこで待ち伏せる」


「ふうん? あなたを信じるけどさ……ホントに上手くいくのよね?」


「上手くいくさ。ただ、あんたにも協力してもらいたいが」


「え? あたしに? いったい何をすればいいのよ?」


「それはだな―――――」


俺は歩きながら作戦を説明した。


結果。


ラミアリスは俺の作戦に賛成してくれた。






目的の地点にたどりつく。


左右に木々きぎが立っている。


その木々の隙間すきま獣道けものみちがある。


この場所は、左右の木々があまりに鬱蒼としすぎており、通れない。


だからここを通りかかった者は、必ず獣道を通過する。


「ここで盗賊を待ち伏せする」


「……なるほど。確かに、左右に通れそうなところがないわね」


「ああ。だから盗賊たちは、この獣道を絶対に通るんだ。そこを俺たちが襲撃する」


盗賊は、すぐにでもやってくるだろう。


早めに準備しておいたほうがいいな。



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