第1章2話:転生と記憶

――――【アルズクロス物語ものがたり


それが、このゲームの名称である。


ダークファンタジーな世界観のVRゲームであり……


リアルと変わらないレベルの没入感ぼつにゅうかん


膨大なイベント。


面白すぎる探索要素たんさくようそなどを持つ。


やりこみ要素も豊富であり、発売当初から人気が沸騰ふっとうし、世界的なゲームの地位を確立している。


そんな名作に、前世の俺もハマっていた。


フリーターだった俺は、暇な時間のほとんど全てを【アルズクロス物語】につぎ込んだ。


とにかくプレイしまくった。


攻略サイトの知識を全て暗記し―――――


あらゆるダンジョンの攻略方法や、イベントの発生条件を熟知し――――


全クリアしても飽き足らず、何度もキャラを作り直しては、2周目3周目のプレイにチャレンジした。


特にRTAについてはめちゃくちゃ熱中した。


RTAとは、プレイ開始から、どれだけ速くクリアできるかにチャレンジすることだ。


俺は、世界一せかいいち最速さいそくでクリアすることを目標に【アルズクロス物語】のRTAにチャレンジしまくった。


……まあ、さすがに世界一とはいかなかったが。


日本一レベルの最速RTAは達成できていた。


それぐらい俺はこのゲームが好きであり、やりこんでいた。





そんな【アルズクロス物語】の世界に、俺は転生したのである。


前世でトラックにかれて死んだからだ。


ほとんど痛みを感じる暇もない即死だったと記憶している。


転生のとき女神様めがみさまは、以下の3つのことを言っていた。




・【アルズクロス物語】の異世界に転生させてあげる。


・異世界ではセーブやロードはできないし、1回死んだら終わりだから注意すること。


・あ、チートスキルとかはないから、自力でなんとか頑張ってね。




……やばすぎる。


アルズクロス物語は、ダークファンタジーの世界観だ。


チートスキルもナシでは、あまりにも過酷で、容赦のない世界である。


しかし。


(俺には、前世の知識がある!)


ゲーム知識。


RTAをこなす中で築いた最大効率の攻略法。


それらが全て頭の中に入っている。


チート能力はなく、ユニークスキルも奪われてしまった、完全な無能である俺。


だが、前世の知識があればクリアできるはずだ。


(このゲーム世界を最速さいそく攻略こうりゃくしよう。そして人生逆転してやる……ッ!)


さっきまで俺は絶望に打ちひしがれていた。


しかし今は、未来への大きな希望であふれていた。



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