ユニークスキルを奪われて、無能力者となったために最下層の身分へと落とされたオッサン、ゲームの知識を駆使して最速で成り上がる。ヒロインと出会い、スライムをテイムして旅をする。

てるゆーぬ@キャンピングカー2巻発売中!

第1章

第1章1話:最下層民

俺はロッシュ。


37歳。


赤髪。


黄色い瞳。


身長170センチ前後。


田舎街いなかまちで肉体労働をしていたオッサンである。


だが、俺は街を追放されることになってしまった。


なぜなら無能力者むのうりょくしゃになってしまったからである。





この世界では、人間ひとりに対して、かならず一つずつ【ユニークスキル】が授けられる。


18歳のときの成人式で、どんなユニークスキルを持っているかを調べられる。


このときユニークスキルが存在すればいいが……


ユニークスキルのない、無能力者だと判定された場合は、以後、最下層さいかそうの地位に置かれる。


そんな最下層民さいかそうみんのことを【ルーカー】と呼ぶ。


ルーカーは、迫害された民であり、ほとんどが無能力者なのだ。





俺にはユニークスキルがあった。


だから18歳の成人式の段階では、ルーカー認定はされなかった。


しかし37歳になった現在。


ちょうど1ヶ月ほど前。


俺は、スキルテイカーという犯罪者にユニークスキルを奪われ、喪失してしまった。


つまり無能力者となってしまったのである。


無能力者は、ルーカーの烙印らくいんが押される。


たとえ『犯罪者にユニークスキルを奪われた』という、被害者であったとしても、関係がない。


無能力者はルーカーなのである。


よって、俺は、街を追放され―――――


ルーカーだけが居住する集落へと移送されることになった。





その移送の馬車に、俺は現在、乗車している。


幌馬車ほろばしゃである。


山道やまみちを走っているようだ。


ほろの中の暗がりに、俺は力なく座り込んでいた。


ルーカーになったことに悲観し、ただただ絶望していた。


なぜならルーカーは、最も迫害される民。


最下層にして最底辺の人間。




『ルーカーには何をしても構わない。殺しても罪にならない』




……というのが、この国はおろか、大陸たいりく全土ぜんどに共通するルールだ。


ゆえにルーカーに認定された者は、人生が終わったことと同義である。


ルーカーから脱却することはほとんど不可能。


一生、いずり回って生きていかなければならない。


(どうして俺が、ルーカーなんかに……)


これから待ち受けるであろう悲惨な人生を想像し、気が狂いそうになる。


どうすればいい?


どうしようもない。


絶望が、俺の心を押しつぶそうとしていた。


……と。


そのときである。


「!!!?」


ふいに、全身に衝撃が走った。


まるで雷に打たれたかのような衝撃だ。


そして。


俺は思いだした。


前世の記憶を。


そして。


ここが、ゲームの世界であることを―――――




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