【BL】最高位神官の美しきハイエルフは女装男子だった!!
マックス一郎
第1話 150歳の憂鬱
別の世界、アマーネス
中央大陸アルメンダリース
エルフ国家、エリテリア宗教国
首都エリアステス市
女神アマネア大神殿
アマネア歴3512年12月1日
お昼頃
大神官のアマニエリス・エーオマーは2週間前に150歳になった。
エルフ国家でも希少種のハイエルフである自分は結婚適齢期になったのを待ったかのような周辺国家の大袈裟すぎる誕生日祝いには目まぐるしいものがありました。300年ぶり、俗に言う大神官結婚強奪戦が開始された。大神官は様々なことに思考を巡りながら大神殿を足早に歩ていた。
「エーオマー大神官猊下、お待ちください。」
大神官を呼び止めたのは若い女性エルフのソンヤ・マリーセ神官だった。
「何か用か、ソンヤ神官?」
ため息混じりの返答をした。
「猊下、サーラン王国の王子、レストス・サーランが先ほどこちらに向けて、王国の首都を出発したのお知らせが届いた。」
「またお呼びではない王族が来るのか?」
「はい、猊下。」
アマニエリスは更に深いため息をついた。
サーラン王国の王子、ケータス帝国の王子、イルナン王国の姫、魔王のご子息、ヴァンパイア皇帝のご子息など、既にこちらに向かっていることを聞いた。
「150歳になるものじゃない・・・」
「いかがいたしましょうか、猊下?」
「気分がすぐれないのでちょっと休む。夕方の礼拝にはでない。」
「かしこまりました、猊下。」
アマニエリスは再び前に振り向き、今度はゆっくりと寝室に向かった。
彼女は身長170センチで細身の体、雪のような白い肌、銀色の長い髪、エルフ特有の長い耳、大きな銀色の目、優雅で整った鼻と唇、洗礼された歩き方、正に歩く美の具現化であった。
神官の白い際服の上、大神官の証である白いローブを着ていた。
「やはり美しいわ、アマニエリス様・・・」
ソンヤ神官が寝室へ向かって歩いていくアマニエリスを熱い視線の目で追いながら、つぶやいた。
寝室に着いたアマニエリスはドアに鍵をかけ、服を脱ぎ、透け透けの白い下着姿で大きなベッドへ飛び込むようにうつ伏せに倒れこんだ。
「何でこうなるの?・・・落ち込むわ。」
足をパタパタしながら、頭を枕に沈めた。
「バカな王族たちども・・・」
彼女は色々考えていた。結婚適齢期になったことで各国が動き出した。宗教国の歴史の中で最高位の女性大神官が一定の年齢に達すると必ず夫及び配偶者を取らなければならない掟がある。その夫なる人物は周辺国家の王族、貴族などになる者が多く、その者の出身国が絶大な影響力を有するようになる。
まずは大陸南部のサーラン王国の王子、レストス・サーランは黒目で185センチの黒髪の美男子で剣術の天才と名を轟かせる人物で、筋肉質の体系で人間の年齢では25歳だったため、エルフに比べれば超が付くほど年下だが、結婚もせず、側室も持たず、硬派男子で通していた。
彼と正反対は大陸南西にあるケータス帝国の王子、レナン・レ・ケータスであった。180センチの金髪で緑色の目をしたイケメン、年齢は28歳、細マッチョで色沙汰が多い人物だった。既に結婚していて、側室も大勢いたが、帝国が一夫多妻制のため、今回名乗りを上げたと思われていた。
それから大陸北西のイルナン王国の姫君、パートリシエ・イルンナン・カレーラ。ダークエルフの母親と人間の上位種である超(ハイパー)人間(ヒューマン)で国王の父。ハーフエルフのため、年齢はまだ100歳だが見た目の年齢はアマニエリスと同様、人間で見ると20歳前後だった。イルナン王国は多種族国家であるため、異種族婚、同性婚、一夫多妻、一妻多夫婚など自由に認められていた。姫は170センチでエルフ特有の長い耳、細身の体だが豊満な胸と丸く、綺麗なヒップ。小麦色の肌、青い目と父親似の金髪だった。
この大陸の北の最果てにある魔王領から魔王の長男で魔族貴公子のマラック・ヘストファーもこちらに向かっていた。彼は魔族特有の薄い紫色の肌、白い髪、黒い目、筋肉質な肉体と190センチの高身長だった。貴公子の年齢は人間でいうと89歳で見た目は20代後半。50年前、この大陸の国家と魔族軍の戦争を終結してから比較的平和になったものの、たまに小競り合いがある程度起きていた。絶大な影響力を持っている最古国家であるエリテリア宗教国と縁を結べば、その小競り合いは鎮静化する狙いがあった。
大陸の西南、ケイパートス山脈の麓にあるヴァイオリン帝国の皇帝、ヴァラード・ヴァラドラン2世の長男で王子のロスカーン・ヴァラドランも参戦する予定だった。このヴァンパイア王子は450歳で最年長だった。この世界のヴァンパイア特有の不健康そうなまでの肌の白さ、普通の体系、イケメンだがどこか違和感を覚える顔立ち、長い茶髪と赤い目をしていた。身長は175センチでこの世界の男性の平均身長だった。独身貴族と思われていたが、初めて大神官強奪戦に参戦したことが各国の注目を浴びた。
大陸の東にあるレイマン平原の中央にある獣人連合国、オステア共和国の第20代大統領、ジュアン・テレスコンが自ら参上する予定だった。この大統領はライオンの獣人の名門家の出、年齢は30歳、カリスマ性を持ち、雄弁で共和国歴代大統領断トツの人気を誇っていた。身長は180センチで犬歯、尻尾、猫耳と長い茶髪以外はほぼ筋肉質の人間にしか見えず、獣人特有の野生感がなかった。
最後の大物は大陸の中央にある閉鎖的な国家、ドマーゴン公国に住まいを構えた60年前に召喚された異世界の勇者、トヨヒコ・ハラダ。異世界人であるため、見た目は25歳ぐらい、召喚された当時の年齢のままだった。日本という異世界の国から来た。彼はスキンヘッドで顎鬚を生やしている細目の男性。身長は165センチでこの世界の平均以下。勇者が召喚されたことにより魔王軍との戦局が変わり、50年前に和平条約が交わされ、表向きで一応平和な世界になった。この勇者のいい噂が何一つなく、容赦のない残忍な性格と言われていた。
最有力である彼ら以外、諸国から様々な王族、貴族がエリテリア宗教国に続々集まりに来ることになっていた。各国の大使が神殿に知らせに来ていた。
大神官という役職は宗教的な意味合いが濃く、政治的力がなかったものの、この世界で圧倒的な宗教人口を持つ女神アマネア教の頂点、だからこそ強い影響力を持っていた。
広いベッドで足をパタパタしながら、アマニエリスは軽く頭を枕にぶつけていた。
「あのクソオヤジのせいでこんなことになった。」
アマニエリスは仰向けになり、天井鏡に映っている自分の姿をゆっくりと見つめた。
確かに自分はハイエルフの女性にしか見えなかったことを改めて思い知らされた。
この国で宰相であるアマニエリスの父親は現国王の弟で桁外れの魔力の持ち主だったが、現国王は更にその上を行ってたため、王位継承権で負けて、宰相に収まった。
ハイエルフの現国王は一夫多妻制を取り、エルフ、ダークエルフ、ハーフエルフの妻たちを娶り、数人の子供を儲けたものの、彼と同等若しくはそれ以上の魔力を持つ後継者に指名できる男子は一人しかいなくて、尚且つ女性大神官になる女子もいなかった。
宰相であるアマニエリスの父親は普通のエルフである母親を妻一人として娶った。その婚姻関係で子ども3人生まれたが、何れ全員は男子だった。アマニエリスを含めて。だけどここから話が変わる。エルフ、ハイエルフを含め、魔法が使えるものの、神聖魔法が使えるのは女性エルフのみだった。それは例外がなく、この世界、この国の建国以前からずっと引き継がれてきたことだった。
アマニエリスが生まれるまで。
アマニエリスは生まれたての頃、神聖魔法の適正が確認され、本来はハーフエルフになると思われていたが、ハイエルフの特徴を持って生まれていた。
「わたしは男性なのに神聖魔法が使える・・・そして見た目は女性・・・」
またため息をついた。
無駄だと思いながら、パンツの中に手を伸ばして、下半身を触った。
やはりあった。。。女性にないものを。。。
アマニエリスまたため息をついた。
国王、宰相と一部の官僚のみが知っている秘密。
宗教的象徴である女性大神官は女装男子だったのだ。
「なんでこうなったのよ・・・男と結婚しなきゃならないなんって、マジでへこむわ。」
アマニエリスは映っている自分を見ながらつぶやいた。
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