第五十四話うーん、磔刑

 俺が放った納豆糸はエセ納豆好きに突き刺さり、そのまま体を壁に固定した。


「納豆パーティにはなぁ、納豆食べない奴なんていない!それに、こんな納豆はこんな見た目グロくねぇ!」


 俺は目にするのもためらう納豆料理に酷似したナニカを口の中に運ぶ。


 吐き気を催す系の邪悪な味がした。しかし、こんな冒涜も腐っても納豆。無駄にしまいと飲み込む。

 

 俺は絶対に納豆糸の固定具が外れないように目で見えるかの際どい細さで更に縫い付ける。


 貼り付けにした参加メンバーを横に並べ、順番に腹パンする。


「内容、外装、実態。全てにおいて最高じゃなきゃいけねえんだよ!」


 そう言い終えて、若干の落ち着きを取り戻したので、俺はゆっくり深呼吸して一旦冷静になる。


 冷静になって辺りを見てみると、先程までの冒涜的な風景に罪人嘘吐き達が貼り付けにされている。まったくもって、悪趣味な絵画のような光景に、ライターを使おうとする手が止められなくなりそうだ。


 蚊に刺されたのか、少々のかゆみを覚えたので、なんとなく俺の体を見てみる。


 すると、服がところどこ破れており、そこに大口径弾が突き刺さっていた。


 すぐに処置をして、外にでても何も恥ずかしくない、問題のない容姿にする。


『この納豆野郎!さっさとこれをどうにかしろ!』


 等の中身は大体変わらずの類猿人の仲間らしい者によるさえずりが複数聞こえたような気がする。しかし、特段問題がないので、再度腹パンして無視する。


 淡々と俺は、ここにいた証拠を隠蔽して警察に電話をかけ通報した後にその場から去った。


 次からは、やばい奴からの納豆パーティの誘いは暴力でお断りしよう。


 と、思いながら。


――


 糸縁があまりの酷すぎるパーティに、お怒り心頭どころか武力行使で中止まで追い込んだ後、ミラはジェームが運転るする車の中でビールを飲んでいた。

 

「さて今回も相変わらずの犯罪組織潰しよ!」


 ミラはテンションが上っているのか、車内に持ち込んだ酒瓶を掲げる。


 その様子を見て、ジェームのテンションは下落の一途を辿っている。

 

「だめだこりゃ、今回は保護しないといけない系の人間がいること、本能で覚えてるか?」

 

「大丈夫よ、問題ない。一番いいビールを頼むわ」


「分かってねぇな。よし、上に報告して元の組織に出戻りしてもらうか」


「流石に冗談よ………………貴方なら察してくれると思ったんだけど」


「すまねえな。こっちは、誰かさんが車に乗る気がないような行動取ってるから、事故らないよう必死で前に集中して運転してるんだわ。あんまり声かけないでくれ、まともな答えなんて一切返ってこないから」


「酒を飲んで、まったくもって意識に問題のない状態で、運転することの何が悪い」


「血中濃度って言葉は、もちろん知っているよな?答えはそこにある」


「私の血中濃度の理論値は0パーよ」


「分裂体に意識移してるだけで、結局のところ意識が酔ってるじゃねえか。検査しても一切引っかからない上で、事故起こすから、一番たちがわりい」


「自分で言うのも何だと思うけど、私を敵にしたら、相当めんどいことになるとは自負しているわ」


 ミラがえっへんという様子で、誇らしげに胸を張る。


「実際、命を一切顧みない自爆特攻を何回も襲ってくるって考えたら、お前がチーム発酵で一番面倒だな。一番強いのは乳酸菌だが。八葉を見習え。あいつンなんて武器作る程度で、ほとんど武闘家だぞ」


「アレはアレでなんだか、ノルトラの範疇を超えたものを感じるから嫌ですー。あんなの、人体の仕組みに逆襲しているようなもんですー。ヒック」


「で、今向かっている、俺達の乗っていた飛行機を見事に落としてくれた、犯罪組織のアレクサンドリア班はどんなもんなんだ」


「あなたは自分で調べてるから、言わなくても問題ないと思うけど?」


「そうかい。じゃあ着いたぞ、アレクサンドリア班の本拠地に」


 そこは、路地裏にあり、全くもって人を寄せつかせない空気感を纏っている。


 通常の思考ができる人間なら、絶対に寄り付かないであろうここ。少し前まで納豆パーティが行われていた、会場であった。


「とんでもなく辛気臭いわね。これは丸わかりじゃない」


「いや、ここら辺りの建物全部そんな感じだから、カモフラージュは出来ていると思うぞ」


 二人はそんなことを言いながら、犯罪組織に入っていった。


 セキュリティがしっかりとしており、少しの時間がかかった。しかし、ところどころ、セキュリティ自体が破壊されているものがあったので意外とスイスイと行けた。


 そして、各部屋を探索してなにもないことを確認した後に、糸縁が暴れた元納豆パーティ会場に入る。


 そこにあったのはボコボコにされて、まるで浮いているかのように見える形で、死ぬ寸前で止められていた構成員たちがいた。

 

「酷い臭いね。この部屋、ただの野郎臭さの他に、納豆らしきものの臭いと、生ゴミとかが集合した地獄みたいな臭さがあるわ。こんなもの、国際法で禁じないといけないレベルの禁忌よ」


 ミラがしかめっ面をして思わず、ガスマスクをつける。


「確かにそうしたい気持ちもわかるが、納豆ってことはこれって、糸縁がやったんじゃないか?」


「冗談きついわ、納豆ボーイは日本人でも社畜休みでも働くゾンビじゃないのよ?休養って言われて、わざわざ仕事して、こんなやっつけするような人間ではないわ」

 

「まあ、たしかにそうかも知れないな。休みのときは、一ヶ月にも及ぶ睡眠をしていたってくらいだしな」

 

 その言葉を聞きながら、嫌な顔で部屋をくまなく調査したミラが、

 

「とりあえず、ここから得られる情報はないわ。ポリスにチクって次に行きましょう」


 と言って、二人は次の場所に向かっていった。

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