第2話 試合前の控室でのやり取り: 獅子堂 一真と天羽 龍人
試合直前、獅子堂 一真(ししどうかずま)は控室で静かに目を閉じ、深い呼吸を繰り返しながら心を落ち着けていた。彼にとってこの試合は、ただ勝つだけでなく、自分がヒーローとして本当にふさわしい存在であるかどうかを試される重要な場だった。その時、静かに控室の扉が開き、天羽 龍人(あもうたつと)が入ってきた。
天羽は柔らかな表情で獅子堂を見つめ、少し微笑んで言った。
「大きな試合だな、獅子堂。この試合はお前にとって、ただの一勝以上の意味を持つだろう。」
獅子堂は目を開け、少し緊張した様子で天羽を見上げた。
「天羽さん、僕には、勝つ自信はあります。でも、風間 修羅(かざましゅら)は僕よりも経験も強さも桁違いです。彼に挑むことで、本当に観客に勇気を届けられるんでしょうか?」
天羽は静かに頷き、少しの間、言葉を選ぶように沈黙した後、語りかけた。
「獅子堂、強さというのは力だけではない。お前がこの戦いを恐れずに挑むその姿こそが、ファンにとっての勇気そのものなんだ。大切なのは、何度倒れようとも、再び立ち上がる覚悟があるかどうかだ。」
獅子堂はその言葉を聞き、少しずつ表情が和らいでいく。天羽はさらに続ける。
「俺も若い頃、数えきれないほど倒れてきた。でも、立ち上がり続けることで、俺はただのレスラーじゃなく、ファンのヒーローになれた。今度はお前の番だ。倒れても立ち上がり、どんな痛みにも立ち向かう。その姿が、お前を本物のヒーローにするんだよ。」
天羽の言葉に、獅子堂の中で湧き上がるものがあった。彼は立ち上がり、拳を握りしめ、力強く頷いた。
「わかりました、天羽さん。僕は何度倒れても、何度でも立ち上がります。風間 修羅に屈することなく、最後まで戦い抜きます!」
天羽はその決意を見届け、再び微笑んだ。そして、獅子堂の肩に手を置き、静かに励ました。
「お前ならやれるさ、獅子堂。行ってこい。リングでお前の覚悟を見せてくれ。」
そう言い残して、天羽は控室を出ていった。獅子堂はその背中を見つめ、先輩の重みある言葉が心の奥底に染み渡るのを感じた。今、自分は一人ではない。リングには観客が、そしてヒーローとしての道を導いてくれた天羽が見守っている。
彼は深く息を吸い、胸に強い決意を宿して、試合会場に向かう準備を整えた。
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