幅員〜道に飲み込まれた真実
星咲 紗和(ほしざき さわ)
第1話 道の囁き
夜が更け、町外れの幹線道路は静まり返っていた。車の往来が減り、街灯の明かりもどこか頼りなく見える。その道を歩くのは、地元のジャーナリストである三木一郎。最近、町の噂で耳にした奇妙な話が彼の好奇心を掻き立てていた。
「この道、毎日少しずつ狭くなってるって本当なのか…?」
三木はそう呟きながら道路の幅を眺める。何度も通ったはずの道だが、確かにどこか違和感があった。以前なら二台の車が並んで通れたはずなのに、今はすれ違うのもぎりぎりに見える。
しばらく歩いていると、ふと耳元で「チリン」と鈴の音が鳴った。周りを見渡しても誰もいない。風が強いわけでもなく、音の正体がわからないまま、また一歩進んでみた。
「チリン…」
再び、鈴の音。三木は辺りを見回すが、やはり誰もいない。道路はただ静まり返り、鈴の音だけが奇妙に響く。
「なんだ、この音は…」
思わず足を止めたその時、背後から自転車の音が近づいてきた。振り返ると、町の老人がゆっくりと三木の隣を通り過ぎる。三木は思い切って老人に声をかけた。
「あの、この道が少しずつ狭くなっているって話、知ってますか?」
老人は立ち止まり、彼にじっと視線を向ける。その目には、どこか言いようのない不安が宿っていた。
「知ってるさ…鈴の音が聞こえるだろう?それが、道が狭まる合図なんじゃよ。」
老人はそう言うと、意味深な微笑みを浮かべ、自転車でゆっくりと遠ざかっていった。
三木は立ち尽くしながら、その場に一人残された。鈴の音と共に狭まる道、そして消えた人々——。この道には、確かに何かがある。心の中で湧き上がる恐怖と好奇心を抑えきれないまま、三木は再び歩みを進めた。
そして、次の瞬間、再び鈴の音が「チリン」と響く。三木の胸に、言い知れぬ不安が広がっていった。この道に隠された真実を知るための旅が、今始まろうとしている。
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